【歌詞対訳】”The Headmaster Ritual” / The Smiths

2024年2月7日

初めて聴いたときの衝撃度という意味では、スミスの曲のなかで圧倒的にナンバーワンに位置する曲。一度聞いたら忘れない奇妙なリフ、ヨーデルみたいな謎のコーラス、ブラックユーモアの度が過ぎていて悲惨というより笑いすら呼び起こす歌詞。どの部分を切り取ってもスミスとしか言いようがない要素であふれている。なんとなく『ライ麦畑でつかまえて』の雰囲気を感じる(村上春樹には悪いが僕は野崎訳のほうがずっと優れていると考える)。ということで僕のワードチョイスは若干それに影響を受けたものになっている。

“The Headmaster Ritual"


Belligerent ghouls

run Manchester schools

Spineless swines

Cemented minds

Sir leads the troops

jealous of youth

same old suit since 1962

he does the military two-step

down the nape of my neck

I wanna go home

I don’t want to stay

give up education

as a bad mistake

mid-week on the playing fields

Sir thwacks you on the knees

knees you in the groin

elbow in the face

bruises bigger than dinner plates

I wanna go home

I don’t wanna stay



Belligerent ghouls

run Manchester schools

spineless bastards all

Sir leads the troops

jealous of youth

Same old jokes since 1902

he does the military two-step

down the nape of my neck

I wanna go home

I don’t want to stay

give up life

as a bad mistake

Please excuse me from the gym

I’ve got this terrible cold coming on

he grabs and devours

he kicks me in the showers

kicks me in the showers

and he grabs and devours

I wanna go home

I don’t want to stay

Meat Is Murder (1985) bookletより引用

「ザ・ヘッドマスター・リチュアル」(校長先生の儀式)


好戦的で残忍なやつらが*

マンチェスターの学校を牛耳っている*

意気地なしの豚ども

セメントで塗り固められた精神

先生は部隊を率いている

若さに嫉妬して

1962年からずっと同じ古ぼけたスーツを着て

先生はぼくの首筋に沿って*

軍隊式のツーステップをする

家に帰りたい

ここにはいたくない

たちの悪い間違いだったと思って教育なんかあきらめてしまおう

週半ばの運動場で

先生はひざまずいた生徒たちをピシャリと打ち

股間に膝蹴りし

顔に肘鉄をくらわせる

ディナーの皿よりも大きなあざ

家に帰りたい

ここにはいたくない



好戦的で残忍なやつらが

マンチェスターの学校を牛耳っている

みんな意気地なしのクソッタレだ

先生は軍隊を率いている

若さに嫉妬して

1902年から変わらないおなじみのジョークを口にして

先生はぼくの首筋に沿って

軍隊式のツーステップをする

家に帰りたい

ここにはいたくない

たちの悪い間違いだったと思って

人生なんかあきらめてしまおう

お願いです、体育は休ませてください

ひどい寒気がするんです

先生は胸ぐらをつかんでじっとにらみつける

シャワー室でぼくに蹴りをいれる

それから胸ぐらをつかんでじっとにらみつける

家に帰りたい

ここにはいたくない



(注)

*belligerent(形)「好戦的な」

この語はラテン語のbellum(戦争)から来ている。英語で「戦争」はwarだが、bellumが使われている例はほかにもあって、一例を挙げると、アメリカのカントリーポップグループLady Antebellumのantebellum(ante(~の前)+bellum(戦争)=戦前の、南北戦争以前の)。南北戦争に際して、アメリカ南部は奴隷制を主張し敗北した歴史を持つが、それ以前の古き良き南部を懐かしみ称揚するようなニュアンスが込められた語でもあるため、現在はBLM運動の流れを受けてLady Aと改名している。

*ghoul(名)「墓あらし、(死体愛好など)残虐趣味の人」

自分なんかは世代的に『遊戯王』に出てくるグールズを連想する。

*run(他)「~を経営する、操作する」

*the nape of one’s neck「うなじ、首筋」



ジョニー・マーのライブアルバム Adrenalin Baby(2015)より。モリッシーは嫌な顔をしていそうだが、この端正なギターワークとヘタウマなボーカルのジョニーには好感がもてる。