【歌詞対訳】”Present Tense” / Radiohead

2024年2月7日

8枚目のアルバム『ア・ムーン・シェイプト・プール』(「月の形をした水たまり」の意味)(A Moon Shaped Pool, 2016)に収録。トム・ヨークには絶望的な夢想家、悪意たっぷりの皮肉屋、巧みに暗喩を使いこなす現代批評家などいろいろな顔があるが、その中でも朴訥とした抒情詩人としての顔が前面に出たアルバム。ダブ・ステップに傾倒した前作『ザ・キング・オブ・リムズ』(「枝の王」の意味)(The King of Limbs, 2011)から今度はどう来るかと思っていたら、大胆なオーケストレーションにより壮大さを増しつつ、しかし全体としては非常に柔らかいテクスチャーを持つ、意外なほどコンパクトな作品となった。ザ・スミスと同じく、レディオヘッドは僕の青春のBGMになっているところがあって、一番好きな曲を挙げるのは不可能に近い。しかし一番新しいアルバムの中で一番好きな曲を挙げるとしたら、迷うことなくこの"Present Tense"を選ぶ。数多くのロック・アルバムを聴いてきたけれど、はっきり言って、これほど美しい曲を僕はほとんど知らない。相当なキャリアを積んだあとでもこういう曲を放ってくるから、レディオヘッドというバンドはどこまでも信頼できるのだと思う。

“Present Tense”(作詞:Thom Yorke 作曲:Radiohead)

This dance

This dance

Is like a weapon

Is like a weapon

Of self-defense

Of Self-defense

Against the present

Against the present

Present tense

「プレゼント・テンス」(現在時制)

この踊りは

この踊りは

武器みたいだ

武器みたいだ

自己防衛のための

自己防衛のための

現在に対する

現在に対する

現在時制にあらがうための

I won’t get heavy

Don’t get heavy

Keep it light and

keep it moving

I am doing

No harm

僕はヘヴィにはならないよ

君もヘヴィにならないで

軽やかに

動いていくままにしよう

僕はなにも悪いことはしていないよ

As my world

Comes crashing down

I’ll be dancing

Freaking out

Deaf, dumb, and blind

僕の世界が

粉々に砕け散るとき

僕は踊っているだろう

気が動転して

耳も聞こえず、物も言えず、目も見えなくなる

In you I’m lost

In you I’m lost

君に夢中だよ

僕は君に夢中なんだ

I won’t turn around when the penny drops

I won’t stop now

I won’t slack off

Or all this love

Will be in vain

1ペニーが落ちても僕はふりかえらない*

止まりはしない

歩を緩めはしない

そんなことをしたら この愛のすべては

無駄になってしまう

*the penny (has)dropped: 「やっとわかった、うまくいった」を連想させるフレーズ。

Stop from falling

Down a mine

It’s no one’s business but mine

Well, all this love

Has been in vain

深い穴に

落っこちていくのを止めるんだ

それは他でもない僕の責務なんだ

この愛のすべては

無駄になってしまったけれど

In you I’m lost

In you I’m lost

In you I’m lost

In you I’m lost

君に夢中だよ

僕は君に夢中なんだ

君に夢中だよ

僕は君に夢中なんだ


もともとは2009年のラティチュード・フェスティバルでトムがソロで披露した曲だが、そのときはそれほどピンとこなかった。このアレンジメントはジョニー・グリーンウッドの力によるところが大きいだろう。多くの偉大なバンドと同じように、レディオヘッドという集団にはある種の化学反応を引き起こす力が備わっている。