【歌詞対訳】”Avalanche” / Leonard Cohen
サード・アルバム『愛と憎しみの歌』(Songs of Love and Hate, 1971)の1曲目。愛の反対は憎しみではなく無関心だと聞く。たしかに、相手に普通以上の関心を向けているという意味では愛も憎しみも本質的に同じものだ。この歌は先に"I Stepped into an Avalanche"という詩として発表されたものをベースに作詞されており、コーエンの憂鬱にとりつかれた詩人としての側面をよく表している。"hunchback"である「私」(市川沙央さんの『ハンチバック』が芥川賞を受賞したことは記憶に新しい)と、私をさげすむ「あんた」の関係性は文字通り愛と憎しみだし、コーエンの出自を考えれば、ユダヤ人とその迫害者、精神と肉体、聖と俗、神と人といったキーワードで読み解くこともできそうだ。
*この和訳では原詞のニュアンスを出すためにあえて現代では差別的と受け取られる表現を使用した。ご了承いただければと思う。
“Avalanche" (written by Leonard Cohen)Well I stepped into an avalanche,
it covered up my soul;
when I am not this hunchback that you see,
I sleep beneath the golden hill.
You who wish to conquer pain,
you must learn, learn to serve me well.
「アヴァランチ(雪崩)」
私は雪崩に足を踏み入れた
それは私の魂を覆いつくした
私があんたの眼に映るこのせむしでなくなったら
黄金の丘の下で眠れるのだが
痛みに打ち勝つことを願うあんたは、
私によく仕えることを、そう、学ばなくてはならない
You strike my side by accidentas you go down for your gold.
The cripple here that you clothe and feed
is neither starved nor cold;
he does not ask for your company,
not at the centre, the centre of the world.
黄金を求めて下っていくとき
あんたは誤って私の脇腹を打つ
あんたが服をあてがい食べ物をくれてやるこの片端は
飢えてもいないし、凍えてもいないぞ
彼はあんたとの付き合いなんか求めちゃいない
世界の、そう、この世界の中心ではな
When I am on a pedestal,you did not raise me there.
Your laws do not compel me
to kneel grotesque and bare.
I myself am the pedestal
for this ugly hump at which you stare.
私が台座のうえにいるのなら
あんたが私をそこへ引き上げたわけじゃない
あんたの法に強いられて
私は醜悪にむき出しのまま跪きはしない
私自身が台座なのだ
あんたがつくづく眺めるこの醜いこぶのための
You who wish to conquer pain,you must learn what makes me kind;
the crumbs of love that you offer me,
they’re the crumbs I’ve left behind.
Your pain is no credential here,
it’s just the shadow, shadow of my wound.
痛みに打ち勝つことを願うあんたは、
何が私を優しくしているのか学ばなくてはならない
あんたが差しだす愛のかけら
それは私があとに残したかけらだ
あんたの痛みはここでは証にならない
それは私の傷の、そう、影にすぎないのだから
I have begun to long for you,I who have no greed;
I have begun to ask for you,
I who have no need.
You say you’ve gone away from me,
but I can feel you when you breathe.
私はあんたに憧れるようになった
欲をもたないこの私が
私はあんたを求めるようになった
求めるもののないこの私が
あんたは私から離れていったと言う
しかし息をするあんたを感じられるのだ
Do not dress in those rags for me,I know you are not poor;
you don’t love me quite so fiercely now
when you know that you are not sure,
it is your turn, beloved,
it is your flesh that I wear.
私のためにそんなぼろ切れをまとわないでくれ
あんたは貧しくないはずだ
もう私をあれほど烈しく愛してはいないんだろう
確信がもてないと気づいたなら
あんたの番だ、愛しい人よ、
私がまとうのはあんたの肉体なのだ
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません