【歌詞対訳】”Hard to Explain” / The Strokes

デビューアルバム『イズ・ディス・イット』(Is This It, 2001)からの1stシングル。This is it!というと「これだよ、これ!」とか「これで終わりだ」という意味になるが(そういえばマイケル・ジャクソンのドキュメンタリー映画も『ディス・イズ・イット』だった)、Is This It?は「これがそれ?」である。散々期待されてきたけど、出てきたものはこれなんすよ、という肩透かし。遊助の『あの・・こんなんできましたケド。』と同じである(懐かしい)。しかし、この意味を本当に理解するためには、21世紀初頭のアメリカの音楽シーンがどのような状況だったのかを知っておかないといけない。

2000年代初頭のアメリカではR&Bやヒップホップ勢がチャートを席巻していて、ロックの人気は低下傾向にあった(ちなみに2017年にはついにR&B・ヒップホップがロックの売り上げを超えることとなった)。そんな中、ガレージロックをサウンドの核とする新人グループが次々に現れてきて、にわかにロックの人気が復活した。そして、そのガレージロック・リヴァイヴァルの象徴として、いわばロックンロールの救世主としてメディアから過剰なまでに祭り上げられたのがこのザ・ストロークスだった。これはブリット・ポップ・ムーヴメントにおけるオアシスと同じような立ち位置ではあったのだけれど、彼らの場合はヴィジュアルがイケているのもさることながら、ニューヨークという土地柄もあって、鳴らしている音がとにかくクールだった。レトロかつチープでありながらスタイリッシュなサウンド、フロントマンであるジュリアン・カサブランカスのけだるく醒めていながら熱いボーカルが21世紀初頭のロックの方向性を決定づけた。

『イズ・ディス・イット』に収録されている曲はどれも非常にポップで聞きやすい。頭ひとつ抜けた曲はない代わりにどれもアイデアとセンスの塊である。"Hard to Explain"はその中でも個人的に特に好きな曲。「最終バスを逃したからさ、次の電車に乗るよ」って、確かにどうしてそうなるのか説明できないね。「まあ、俺は若すぎるけどやつらは年を食いすぎてる」というところはThis is it!だ。そう、いつの時代もロックはこう宣言する若者たちによって更新されてきたのだ。

“Hard to Explain" (written by Julian Casablancas)

Was an honest man
Asked me for the phone
Tried to take control

正直な男だった

俺に電話を求めてきた

コントロールしようとした


Oh, I don’t see it that way
I don’t see it that way

ああ、そんなふうに見てるわけじゃないさ

そんなふうに見てはいない

We shared some ideas
All obsessed with fame
Says we’re all the same

俺たちはいくつかの考えをシェアした

すっかり名声に取り憑かれてる

俺たちはまったく同じだと言う


Oh, I don’t see it that way
I don’t see it that way

ああ、そんなふうに見てるわけじゃないさ

そんなふうに見てはいない


Raised in Carolina
I’m not like that
Tryin’ to remind her
When we go back

キャロライナ育ち

俺はそんなんじゃない

いつ俺たちが帰ってくるか

彼女に思い出させようとする

*[Chorus]
I missed the last bus, I’ll take the next train
I’ll try, but you see, it’s hard to explain
I say the right thing, but act the wrong way
I like it right here, but I cannot stay
I watch the TV, forget what I’m told
Well, I am too young and they are too old
The joke is on you, this place is a zoo
You’re right, it’s true

*コーラス

最終バスを逃したからさ、次の電車に乗るよ

やってみよう、でもわかるだろ、説明するのは難しい

正しいことを言いながら、間違った行動をとる

まさにここはいい感じだけど、俺はとどまれない

テレビを見る、言われたことを忘れる

まあ、俺は若すぎるけどやつらは年を食いすぎてる

そのジョークは君のことさ、ここは動物園だ

君は正しい、それは本当


He says he can’t decide
I shake my head to say
“Everything’s just great”

俺には決められねえよと彼は言う

俺は頭を振って伝える

「何もかもがすばらしい」


Oh, I just can’t remember
I just can’t remember

ああ、思い出せないんだ

思い出せない


Raised in Carolina
She says, “I’m not like that”
Tryin’ to remind her
When we go back

キャロライナ育ち

彼女は言う、「私はそんなんじゃない」

いつ俺たちが帰ってくるか 彼女に思い出させようとする

*[Chorus]
I say the right thing, but act the wrong way
I like it right here, but I cannot stay
I watch the TV, forget what I’m told
Well, I am too young and they are too old
Oh, man, can’t you see, I’m nervous, so please
Pretend to be nice so I can be mean
I missed the last bus, we’ll take the next train
I’ll try, but you see, it’s hard to explain

*コーラス

正しいことを言いながら、間違った行動をとる

まさにここはいい感じだけど、俺はとどまれない

テレビを見る、言われたことを忘れる

まあ、俺は若すぎるけどやつらは年を食いすぎてる

まいったな、わかるだろ、ぴりぴりしてるんだよ、頼むよ

むっつりしてられるように感じがいいふりをしてくれ

俺は最終バスを逃したからさ、俺たちは次の電車に乗るよ

やってみよう、でもわかるだろ、説明するのは難しい