【歌詞対訳】”Black Is the Colour” / Cara Dillon

デビューアルバム『カーラ・ディロン』(Cara Dillon, 2001(全世界リリースは2002))に収録。カーラ・ディロン(1975-)は北アイルランド・ロンドンデリー出身のフォークシンガー。民謡や伝承歌をモダンな解釈で歌い上げるデビュー作はイギリスで大ヒットとなり、数々の音楽賞に輝いた。その1曲目に置かれ、2002年のBBCフォーク賞におけるベスト・トラディショナル・トラックにも選出されたこの曲は、現在でもカーラの代名詞として広く愛されている。アメリカに根づいた民謡であるが、クライド川について言及されていることから、起源はアイルランドやスコットランドにあると考えられているようだ。

歌詞はさまざまなバージョンがあるが、ここでは男性視点から女性に向けられたものとなっている。印象的なピアノから始まるアレンジで、カーラの可憐で儚げな歌声は物語をよりいっそう悲痛なものにしている。なお、"color"ではなく"colour"と表記されているのはカーラが北アイルランド出身だからである。(favouriteやbehaviourのように、イギリス英語では-orが-ourと表記される)。

この歌は19世紀に作られた。その当時の英語圏の人々にとって、「黒髪」は今よりもずっとエキゾティックな感覚を喚起する要素だっただろう(そういえば、アンナ・シューウェルの『黒馬物語』(Black Beauty, 1877)が三辺律子氏の翻訳で光文社古典新訳文庫に入ったのは昨年のこと)。それはゲルマン系ではなくラテン系の人たちに多い要素であるし、もっといえばアフリカ系やアジア系に典型的な要素である。日本だと「恋人の髪の色は黒」では歌にならない……と思いきや、せっかくの美しい黒髪を染める女性たちが多いせいで案外歌になるのかも。それと個人的な話だが、僕は子どものころ熊本市の黒髪という、考えてみればいささか不思議な名前の地域に住んでいたので、その意味でもこの歌には妙な愛着をおぼえる。

“Black Is the Colour" (Traditional. Arranged by Cara Dillon and Sam Lakeman)

Black is the colour of my true love’s hair.

Her lips are like a rose so fair.

She’s got the sweetest face and the gentlest hands.

I love the ground whereon she stands.

「ブラック・イズ・ザ・カラー(恋人の髪の色は黒)」

黒は僕が心から愛する人の髪の色

彼女の唇はとても美しいばらのよう

その顔はだれよりも可愛らしく、その手はだれよりも優しい

僕は彼女が立つこの土地を愛している*

*whereonはon whichの意味。I love the ground on which she stands.よりも古めかしい言い方。

I love my love and well she knows.

I love the ground whereon she goes.

And how I wish the day would come

When she and I can be as one.

僕は彼女を愛していて、彼女もそれをよく知っている

僕は彼女が行くこの土地を愛している

どれだけ願うことか

彼女と僕がいっしょになれる日が来るのを

Black is the colour of my true love’s hair.

Her lips are like a rose so fair.

She’s got the sweetest face and the gentlest hands.

I love the ground whereon she stands.

黒は僕が心から愛する人の髪の色

彼女の唇はとても美しいばらのよう

その顔はだれよりも可愛らしく、その手はだれよりも優しい

僕は彼女が立つこの土地を愛している

I go to the Clyde and mourn and weep

Satisfied I never will sleep.

I’ll write her a letter, just a few short lines

And suffer death ten thousand times.

僕はクライド川へ行き、嘆き、涙を落とす*

もう二度と心安らかに眠れない

彼女に手紙を書こう、ほんの数行だけ

そして一万回の死の苦しみを味わう

*「クライド川」(the River Clyde(アメリカ英語だとthe Clyde Riverの語順))を指す。スコットランド中南部を北西に流れ、グラスゴーを経てクライド湾に注ぐ。

Black is the colour of my true love’s hair.

Her lips are like a rose so fair.

She’s got the sweetest face and the gentlest hands.

I love the ground whereon she stands.

黒は僕が心から愛する人の髪の色

彼女の唇はとても美しいばらのよう

その顔はだれよりも可愛らしく、その手はだれよりも優しい

僕は彼女が立つこの土地を愛している