【歌詞対訳】”Red Dress” / TV On The Radio

2025年4月30日

サードアルバム『ディアー・サイエンス』(Dear Science, 2008)に収録。TV・オン・ザ・レディオには二人のメインソングライターがいる。一人はスウィートでオーソドックスなセンスにあふれたトゥンデ・アデビンペ、そしてもう一人はファンキーかつ実験精神旺盛なキップ・マローン。より正確な言い方をすれば、トゥンデを含むこのグループそのものがもはや変態の域に達している音楽フリーク集団なのだが、そのなかでもキップはとびぬけてアクの強い、奇妙キテレツな音楽性を有している。ビートルズにたとえていえば、トゥンデはポール・マッカートニーであり、キップはジョン・レノンといったところだろう。

荘厳な美しさをたたえた「ファミリー・ツリー」("Family Tree")が終わり、うってかわってこの超ファンキーな「レッド・ドレス」が始まるという流れには本当に度肝を抜かれる。「メリハリ」という言葉はあたかもこの2曲の連なりのためにあるのかと錯覚してしまうくらいだ。なお、「ゴールデン・エイジ」("Golden Age")がアメリカ史上初の黒人大統領の誕生を歓迎する歌だとすれば、「レッド・ドレス」はその前のブッシュ政権への批判をつきつけている歌なのかもしれない。すくなくともアメリカ本国ではそのような見方が強いようだ。とはいえ、このグループの歌の難解さはR.E.M.といい勝負であり、個人的には歌詞の一部だけをピックアップして、それを安易に政治的メッセージと結びつけて解釈するのはあまりよろしくないと感じる。アメリカ黒人の歴史、人種の問題、聖書などへの示唆に満ちたTVOTRの歌はもっと自由な解釈を許すものだと思う。

“Red Dress" (written by Kyp Malone and Dave Sitek)

Hey Jackboot!!!

Fuck your war!!

Cause I’m fat and in love

And no bombs are falling on me for sure

But I’m scared to death

That I’m living a life not worth dying for

「レッド・ドレス」

ヘイ、ジャックブート!!!

お前の戦争なんてファックだよ!!

だって俺は太ってるし恋してるから 

それに爆弾は絶対俺には落ちてこない

けど死ぬ価値もない人生を

生きてるんじゃないかとびくびくしてる

And your plowshare

It’s a sword

And its wide arcing swing chops the heads off of many things

Mono crops… laughter roars

Oh high hilarity!

Oh muck bury me!!

Oh standard bearer carry me burning home from another tour!!

お前のすきの刃 

そいつは剣だ

その大きく弧をえがく一振りは多くのものたちの首をたたき切る

単一作物…… どっと笑いが起きる

なんと愉快なことか!

ごみ野郎 俺を埋めるがいい!!

軍旗手よ 俺をもうひとつの巡業から燃え盛る故郷へ運んでくれ!!

Go ahead put your red dress on

Days of white robes have come and gone

Come and gone

Oh your rivers, oh you waters run

Come bear witness to the Whore of Babylon!

さあ、きみの赤いドレスを着るんだ

白いローブの時代はやってきては去っていった

やってきては去っていった

おお、きみの川が、きみの海が流れる

さあ、バビロンの大淫婦の目撃者となるんだ!

“Hey slave," they called

And we caved

We answered

To a new name

Shout it loud shout it lame

But blackface it

You’re such a good dancer

Oh you’re a star

You’re carnival

Jacaranda petals fall

Mix with the blood of the saints

Shot down in the square

Don’t track it in on the soles of your shoes

When you’re dragged into the back of this car!

「よお、奴隷」とやつらは呼んだ

俺たちは屈した*1

返事をした

新入りに

大声で叫べ、よわよわしく叫べ

でも顔を黒塗りにしろ

お前はかなりいいダンサーだよ

おお、お前はスターだ

お前はカーニバルだ

ジャカランダの花びらが散る

広場で撃たれた

聖人たちの血と混ざる

この車の後ろに引きずり込まれるとき

靴底でその跡を残すな*2

*1 caveは名詞だと「洞窟」だが、自動詞だと「くじける、屈する」の意味。

*2 track in…「(泥・雪など)を持ち込む」

Go ahead put your red dress on

Days of white robes have come and gone

Come and gone

Oh you rivers, oh you waters run

Come bear witness to the Whore of Babylon!

さあ、きみの赤いドレスを着るんだ

白いローブの時代はやってきては去っていった

やってきては去っていった

おお、きみの川が、きみの海が流れる

さあ、バビロンの大淫婦の目撃者となるんだ!

It’s a trap

That much is plain

Still, maybe send snapshots

Of all your sweet pain

Playing torturous games

It goes: Lens, light, fame

Read my names on your lips

When the man cracks the whip

And you’ll all shake your hips

And you’ll all dance to this

Without making a fist

And I know that it sounds mundane

But it’s a stone cold shame

How they got you tame

And they got me tame

そいつは見え透いた罠だ

それでも、たぶんお前の甘美な痛みの

スナップ写真を送るんだろ

込み入ったゲームをしよう

それはこうだ:レンズ、光、名声

その男が鞭をぴしっと鳴らすとき

唇を動かして俺の名前を読め

お前たちはみんな腰を振る

こいつに合わせて踊る

拳をにぎることもなく

つまらなさそうだというのはわかってる

けどそれは石のように冷たい恥辱だ

こうやってお前たちは飼いならされ

俺もまた飼いならされたというのは

So go ahead put your red dress on

Days of white robes come and gone

Come and gone

Oh you rivers, oh you waters run

Come bear witness to the Whore of Babylon!!

さあ、きみの赤いドレスを着るんだ

白いローブの時代はやってきては去っていった

やってきては去っていった

おお、きみの川が、きみの海が流れる

さあ、バビロンの大淫婦の目撃者となるんだ!!