【歌詞対訳】”Roman Holiday” / The National

7作目のアルバム『アイ・アム・イージー・トゥ・ファインド』(I Am Easy to Find, 2019)に収録。ちょっと聴いた感じではロマンティックな曲のようだが、じっさいのところはかなり謎めいている。"Roman Holiday"といえばまず誰もが映画『ローマの休日』(Roman Holiday, 1953)のことを思い浮かべるだろう。"Put me in your movie"というフレーズがあるのでマットがこの映画のことを念頭においていたのは間違いないが、それよりも大事なのは"Roman holiday"と表記した場合の別の意味だ。これは「人の犠牲や苦しみによって得られる娯楽」を意味する表現で、そのことを知っていればこの歌の断片的とも思えるイメージの連なりが多少つかみやすくなる。注釈にも書いたが、マットは写真家のロバート・メイプルソープとの関係についてつづったパティ・スミスのメモワール『ジャスト・キッズ』(Just Kids, 2010)や彼女のインスタグラムでのコメントから歌詞の着想を得たのだという。

“Roman Holiday”(written by Aaron Dessner and Matt Berninger)

I’m your hospital

I’m your silver cross

Tell me what to be

Tell me how to talk

Patti wasn’t lonely

Robert wasn’t lost

Put me on a rope

Take me for a walk

「ローマン・ホリデイ(ローマの休日)」

僕は君の病院さ

僕は君の銀の十字架さ

何になればいいか教えてほしい

どうやってしゃべればいいか教えてほしい

パティは孤独じゃなかった

ロバートは迷っていなかった*

僕をひもにくくりつけて

散歩につれていってくれ

*ピッチフォークによるインタビューの中で、マットはパティ・スミスとロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe, 1946-89)のことであると答えている。

Roman holiday

Every time it rains

Roman holiday

I’ll take away your shame

ローマの休日

雨が降るたびに

ローマの休日

君の恥を取りのぞいてあげよう

I’m not afraid to tell you what I want

I’m not afraid of anything, I want it all

Never leave me out here for too long

Put me in your movie, pin me to your wall

自分が何を求めているのか君に伝えるのは怖くない

何も怖くなんかない、ただ求めているんだ

あまりに長く僕をひとりぼっちにしないでくれ

僕を君の映画に出演させてくれ、君の壁にピン留めしてくれ

Roman holiday

Every time it rains

Roman holiday

We’re all Rainey anyway

ローマの休日

雨が降るたびに

ローマの休日

なんにせよ僕たちはみなレイニーなのさ*

*rainy(雨降りの)とかけている。

She said, “Please think the best of him.”

Please think the best of me

There are police in the museum

彼女は言った、「彼のことをいちばん良く思ってちょうだい」*

私のことをいちばん良く思ってちょうだい

美術館には警察がいるの

*大切な人を自殺によって失くした人に対する、パティ・スミスのインスタグラムでのコメントの一部からとられている。

Roman holiday

Every time it rains

Roman holiday

We don’t feel the pain

ローマの休日

雨が降るたびに

ローマの休日

僕たちは痛みを感じない

She said, “Please think the best of him.”

Please think the best of me

There are police in the museum

She said please

彼女は言った、「彼のことをいちばん良く思ってちょうだい」

私のことをいちばん良く思ってちょうだい

美術館には警察がいるの

どうかお願い