【歌詞対訳】”Heroes” / David Bowie

11枚目のアルバム『ヒーローズ』("Heroes", 1977)のタイトルトラック。デヴィッド・ボウイ屈指の名曲のひとつ。ボウイというと孤高の人、まぎれもないカルトヒーローというイメージがある。個人的なエピソードを披歴させてもらえば、僕はTV on the Radioというアメリカのインディーロック・バンド(長らくアルバムは出していないが、ここのところライブ活動が活発化してきている)が好きで、かれらの"Province"という曲にボウイが参加していたりする。

TVOTRのセカンド『リターン・トゥ・クッキー・マウンテン』(Return to Cookie Mountain, 2006)がいくらエポックメイキングな作品であるとはいえ、初期の時点でのかれらに注目するだけでなく、コラボまでやっちゃてるボウイの先取性はさすがにすごいとしかいえない。だって、われわれ一般人は20代なかばには好奇心の窓がすこしずつ閉まりはじめていき、だんだん昔なつかしい楽曲でしか脳のドーパミンが分泌されなくなっていくというのに、ボウイときたら還暦近くになってTVOTRだぜ。いや、ボウイが一般人からどのくらいかけ離れているかは知っているつもりだけど。リアルタイムで経験できたのは『ザ・ネクスト・デイ』(The Next Day, 2013)『ブラックスター』(Blackstar, 2016)の2枚だけで、いまとなってはこんな尖った人がロック界から失われてしまったのはやはり寂しいことだと感じる。

ボウイはカメレオンだ。文学者でいえばトルーマン・カポーティみたいな(でも本人が好んでいたのはウィリアム・バロウズとかドン・デリーロみたいな、ほんとうにカルト受けする文学だったようだ)。だから時期によっては「正直これはどう評価したらいいのだろう?」みたいなアルバムもあったりするけど、ベルリン三部作から『レッツ・ダンス』(Let’s Dance, 1983)くらいのころは自分としてはけっこう好きである。いくらアーティストといっても、リスナー側はポップミュージックを想定するのだから前衛的で難解なものばかりではこまる。ポップミュージックを異形なものに変えてしまい、なおかつ商業的な成功を保ちつづけた走りはボウイなんじゃないかな。

“Heroes” (written by David Bowie and Brian Eno)

I, I will be king

And you, you will be queen

Though nothing will drive them away

We can beat them, just for one day

We can be heroes, just for one day

「ヒーローズ」

僕は王になるよ

そして君は女王になるんだ

やつらを追い払うものは何もないかもしれないけど

僕たちが倒すんだ、たった一日のあいだ

僕たちは英雄になれるんだ、たった一日だけ

And you, you can be mean

And I, I’ll drink all the time

'Cause we’re lovers, and that is a fact

Yes, we’re lovers, and that is that

君はいやしくなるといい

僕はしじゅう飲んだくれていよう

だって僕たちは恋人どうしなんだぜ、それは事実さ

そうさ、僕たちは恋人なんだ、それだけのことさ

Though nothing will keep us together

We could steal time, just for one day

We can be heroes, forever and ever

What d’ya say?

僕たちをひとつに結びつけるものは何もないかもしれないけど

時間を盗めばいいさ、たった一日のあいだ

僕たちは英雄になれるんだ、永遠にいつまでも

どうだい?

I, I wish you could swim

Like the dolphins, like dolphins can swim

君が泳げたらいいのにな

イルカたちみたいに、イルカたちが泳ぐようにさ

Though nothing, nothing will keep us together

We can beat them forever and ever

Oh, we can be heroes, just for one day

僕たちをひとつに結びつけるものは何もないかもしれないけど

僕たちがやつらを倒すんだ、永遠にいつまでも

ああ、僕たちは英雄になれるんだ、たった一日だけ

I, I will be king

And you, you will be queen

僕は王になるよ

そして君は女王になるんだ

Though nothing will drive them away

We can be heroes, just for one day

We can be us, just for one day

やつらを追い払うものは何もないかもしれないけど

僕たちは英雄になれるんだ、たった一日だけ

僕たちは僕たちでいられるんだ、たった一日だけ

I, I can remember (I remember)

Standing by the wall (By the wall)

And the guns shot above our heads (Over our heads)

And we kissed as though nothing could fall (Nothing could fall)

思い出せるんだ

壁のそばに立っていて

僕たちの頭上を銃弾が飛んでいったことを

何も落ちてくるものなどないかのように僕たちはキスをしたね

And the shame was on the other side

Oh, we can beat them forever and ever

Then we can be heroes, just for one day

恥というものは向こう側にあった

ああ、僕たちがやつらを倒すんだ、いつまでも永遠に

そしたら僕たちは英雄になれる、たった一日だけ

We can be heroes

We can be heroes

We can be heroes, just for one day

We can be heroes

僕たちは英雄になれる

僕たちは英雄になれる

僕たちは英雄になれる、たった一日だけ

僕たちは英雄になれる

We are nothing, and nothing will help us

Maybe we’re lying, then you better not stay

But we could be safer, just for one day

僕たちはなにものでもない、僕たちを助けてくれるものもない

たぶん僕たちは嘘をついている、それなら君は残らないほうがいい

でももっと安全にはなれるかもしれない、たった一日だけ