【歌詞対訳】”I Am a Rock” / Simon & Garfunkel

2026年2月1日

セカンド・アルバム『サウンズ・オブ・サイレンス』(Sounds of Silence, 1966)のラストナンバー。サイモン&ガーファンクル屈指の名曲のひとつだが、もとはといえばポール・サイモンがソロとして発表した曲である。64年のデビューアルバム『水曜の朝、午前3時』(Wednesday Morning, 3A.M.)がアメリカで売れず、ポールはイギリスにわたって音楽活動を継続、アート・ガーファンクルは学士号をとりにコロンビア大学にもどった。そしてポールは滞在先のロンドンで『ポール・サイモン・ソングブック』(Paul Simon Songbook, 1965)をレコーディングし、リリースする。『水曜の朝』からのレコーディングしなおした2曲に加えてオリジナル9曲という構成だが、そのオリジナルのひとつがこの"I Am a Rock"であり、今日よく知られているのはそれをふたたびデュオとしてレコーディングしたバージョンである。

いまでこそ伝説として語り継がれるデュオだが、その優しく、それゆえに時に軟弱さすら感じさせる詩情豊かな楽曲群はおよそアメリカのマーケット向きではなかった。おなじポールでもマッカートニーのつくる音楽はだれにでも愛されるようなひとなつっこさがある一方で、サイモンのそれは優しくはあれど自己を直視してけっして目をそらさないような厳しさを隠しもっている。ことにアメリカ人はそういうストイックさを煙たがり、わかりやすいもののほうへ流れていくものだ。だが彼は自分の資質がどちらかというとヨーロッパ向きであることを自覚していたからこそロンドンに渡り、その後の成功の糸口をつかんだ。それと知らずにダイヤの原石を手にしている人間は数多いが、それをどう磨けばどのような種類の光を放つのか知っている人間はそう多くない。サイモンはまちがいなくそのような限られた少数の一人だったと思う。

“I am a rock / I am an island"という突拍子もない直喩だが、考えてみれば「岩」はなんぴとによってもけっして動かされない強固さ、頑固さの象徴でもあるし、「島」はもっとおおきくて強固でありながら、そこに人や動植物が集まってくるという点では受け入れるということにもつながってくると思う。どんな岩なのか、どんな島なのかを説明する余計な飾りがないところがまた潔くていい。

“I Am a Rock” (written by Paul Simon)

A winter’s day

In a deep and dark December

I am alone

Gazing from my window

To the streets below

On a freshly fallen, silent shroud of snow

「アイ・アム・ア・ロック」

冬のある日

深く暗い12月

僕はひとりでいる

部屋の窓から

下のほうを見つめている

落ちてまもない、しんとした雪の埋葬布につつまれた通りを*

*キリスト教圏では遺体を包む白布のことを“shroud”と呼ぶ。辞書を引くとほかに「経帷子(きょうかたびら)」や「屍衣」といった訳語も載っているが、死者にこれらを着せるのは仏教文化圏なので注意したいところ。

I am a rock

I am an island

僕は岩だ

僕は島だ

I’ve built walls

A fortress, steep and mighty

That none may penetrate

I have no need of friendship

Friendship causes pain

It’s laughter and it’s loving I disdain

僕は壁をきずいた

要塞だよ、険しく強固だから

だれも突破することはできないだろう

友情なんか必要としていない

友情は痛みを引き起こす

僕が軽蔑するのは笑いであり愛情なんだ

I am a rock

I am an island

僕は岩だ

僕は島だ

Don’t talk of love

Well, I’ve heard the word before

It’s sleeping in my memory

I won’t disturb the slumber

Of feelings that have died

If I never loved, I never would have cried

愛の話はやめてくれ

昔その言葉を聞いたことはあるさ

それは僕の思い出のなかで眠っている

死んでしまった感情のまどろみを

邪魔することはしまい

愛したことがなければ、涙することもなかっただろうに

I am a rock

I am an island

僕は岩だ

僕は島だ

I have my books

And my poetry to protect me

I am shielded in my armor

Hiding in my room

Safe within my womb

I touch no one and no one touches me

僕には自分を守ってくれる本と

詩とがある

僕はよろいにおおわれて

自分の部屋に隠れている

僕の子宮のなかでは安全だ*

僕はだれにもふれないし、だれかが僕にふれることもない

*roomとwombで韻を踏んでいる。

I am a rock

I am an island

僕は岩だ

僕は島だ

And a rock feels no pain

And an island never cries

岩は痛みを感じない

島はけっして泣くことがない