【歌詞対訳】”Dan the Dancer” / Mitski

4作目のアルバム『ピューバティー2』(Puberty2, 2016)に収録。ミツキにしてはめずらしく、歌詞は「ダンサーのダン」という第三者の姿を描写する内容となっている。SNS上では「Washing Machine Heart」とか「My Love Mine All Mine」のような、独特の恋愛観を表現する曲が人気な彼女だが、このような隠れ名曲(個人的に)もある。先日のZepp DiverCity Tokyoでのライヴ、この曲がまたかっこよかったんだわ。

両手で崖にしがみついているダンだが、彼女に求められれば片手を差し出す。もちろんこれはメタファーだが、そもそもダンという人物じたいが一個のメタファーだと思う。彼は、崖にしがみついている人のように絶体絶命の張りつめた気持ちで日々を過ごしているのだが、彼女に恋したことでさらなる重圧がその手にかかることになる。最後のコーラス以下は、表面上は彼女を部屋に招きいれてダンスをしたということだが、まあ裏の意味もありますよね……というかんじ。こういうぎこちなさは、すべての奥手男子が思春期から青年期にかけて経験する(あるいは妄想するだけで、行動に移せない)ものだ。なぜ奥手男子の心がわかるんですかい、ミツキさん?

「He loved her more than life itself / I’m sure」と、最後のコーラス前にほんの一瞬だけ歌い手にスポットライトが当たるのだが、これがまた意味深で、こういうひととの過去の交際を「彼は~」という言い方で表現している?と想像させるものである。自分のことで一杯いっぱいで、恋愛に割けるリソースがすくないひとだったのかな。

“Dan the Dancer” (written by Mitski Miyawaki)

Dan had very long limbs

From leading day to day

Hanging onto a cliff

That stretched him every day

And when she’d ask to hold hands

He would smile and

Let one of his hands go

His whole life in one hand

His whole life

「ダン・ザ・ダンサー」

ダンはとても長い手足をしていた

日々ダンスをリードしていたから

崖にしがみついていたのが

毎日彼を引き伸ばしていった

彼女が手をつなぐことをもとめると

彼はにっこりして

片手を離すのだった

彼の全生涯が片手にかかっていた

彼の全生涯が

And when he’d say goodnight and

Leave her doorstep

He’d use his last strength

To wave back

And once back in his room

Once back in his room

He’d return his waving hand

Back to its cliff

おやすみといって

彼女の戸口の上り段をあとにしながら

手をふるために

彼は最後の力をふりしぼっていた

それからいったん自分の部屋にもどると

いったん自分の部屋にもどると

彼は揺れる手を

ふたたびその崖にもどすのだった*

*his cliffではなくits cliffであることから、his handのほんらい置かれるべき場所はcliffなのだという意識が表現されている。

He liked her more than life itself

I’m sure

彼は人生そのものより彼女のほうを愛していた

私はそう確信している

'Cause Dan had never danced outside of his room

When no one was home and he would stop to hear the door

So when he moved with you and felt his body let go

Of course you couldn’t know

It was you and you alone

That he had shown his bedroom dancer to

Shown his bedroom dancer to

Shown his bedroom dancer to

Shown his bedroom dancer to

Shown his bedroom dancer to

Shown his bedroom dancer to

なぜならダンは自分の部屋の外では踊ったことがなかったから

いつ家にだれもいなくて 彼が動きをとめてドアに耳を澄ませようとしたのか

いつあなたと動きながら 自分の体が解き放たれるのを感じたのか

もちろん あなたは知る由もなかった

それはあなただった、あなただけだったということ

彼が自分のベッドルーム・ダンサーを見せたのは*

自分のベッドルーム・ダンサーを見せたのは

自分のベッドルーム・ダンサーを見せたのは

自分のベッドルーム・ダンサーを見せたのは

自分のベッドルーム・ダンサーを見せたのは

*強調構文(It was you and you alone / That he had shown his bedroom dancer to)。it is [was] … that SVという形をしているのが特徴で、通常の和訳であれば…の部分を最後に訳すが、ここではVの過去分詞以下がくりかえされる関係で、行ごとに意味をとっている。蛇足ながら、最後のtoはshow A to BのB(すなわちyou and you alone)が前に移動しているがために残っているもので、文法上、省略は不可。

And he would never tell you that it was his first time

それが初めてだったと 彼はけっしてあなたに言おうとはしなかった