【歌詞対訳】”Masterpiece” / Big Thief
デビューアルバム『マスターピース』(Masterpiece, 2016)のタイトルトラック。新人バンドがいきなり「傑作」というデビュー作を出してしまうのは不遜すぎるな……。まあしかし、飛びぬけた傑作はないにしても、2010年代デビュー組のなかでは抜きんでて個性と実力が光っているバンド、ビッグ・シーフ。気づけばもうデビュー10周年である。あくまでバンドではあるが、実態としてはフロントウーマンであるエイドリアン・レンカー(Adrianne Lenker, 1991-)のソロ・プロジェクトといったおもむき。彼女はまさにクリエイティヴィティのかたまりであり、バンドのソングライティングのほぼすべてを手がけつつ、同ペースでソロ作品も出している。
ギタリストのバック・ミーク、ドラムスのジェームズ・クリヴチェニアもソロとして活動しているが、とにかくエイドリアンがカリスマすぎるので、かれらにはあまりスポットライトがあたらない。これって、J-POPだとミスチル=桜井和寿+3名、スピッツ=草野マサムネ+3名という語られ方をするのといっしょだと思うんだけど(もちろん、熱心なファンはその限りではないだろう。しかし、そのへんのひとにミスチルやスピッツの「フロントマン以外」をたずねても、答えが得られる可能性はかぎりなく低い)、自分としては、このバンドはアンサンブルがとても気持ちいいので、バックやジェームズのこともちゃんとフォローできればと考えている。
ビデオの冒頭でエイドリアンと謎の無線ごっこ(?)をしているのは、ベースのマックス・オレアルチック。彼は『ドラゴン・ニュー・ウォーム・マウンテン・アイ・ビリーヴ・イン・ユー』(Dragon New Warm Mountain I Believe in You, 2022)への参加を最後に、2024年に脱退してしまった。その後もバンドは正式メンバーとしてベーシストを補充しないまま現在に至っている。エイドリアンとバックは元夫婦で、離婚したあともバンドメイトとしていっしょに仕事している。そのへんの感覚が僕にはいまいちぴんとこないが、そういったちょっと普通ではない関係性から生じる感情的問題が、彼の脱退と関係しているのだろうか。マックスのゆる~い雰囲気が、バンドにいい味をもたらしていたと思うんだけどね。
“Masterpiece" (written by Adrianne Lenker)Years, days, makes no difference to me, babe
You look exactly the same to me
Ain’t no time, crossing your legs inside the diner
Raising your coffee to your lips, the steam
「マスターピース」
年も、日も、私にはおんなじだね、ベイブ
あなたはまったくおなじに見えるよ
時間がない、簡易食堂のなかで脚を組んで
あなたはコーヒーを唇まで運ぶ、湯気
You saw the masterpiece, she looks a lot like youWrapping her left arm around your right
Ready to walk you through the night
あなたはマスターピースを見た、彼女はあなたにそっくり
彼女は左腕をあなたの右腕にまとわせる
夜のなかあなたを歩かせる気だよ
You whisper to a restless ear, “Can you get me out of here?This place smells like piss and beer, can you get me out?”
You were asking me how to get you free
I only know the recipe to roam
あなたは落ち着きのない耳にささやく、「ここから連れ出してくれる?
この場所は小便とビールの臭いがするんだ、連れ出してくれる?」
どうすれば自由になれるかあなたは訊いてきたけどさ
あいにく知ってるのはほっつき歩く秘訣だけなんだよね
You saw the masterpiece, she looks a lot like youWrapping her left arm around your right
Ready to walk you through the night
あなたはマスターピースを見た、彼女はあなたにそっくり
彼女は左腕をあなたの右腕にまとわせる
夜のなかあなたを歩かせる気だよ
Old stars filling up my throatYou gave 'em to me when I was born, now they’re coming out
Laying there on the hospital bed, eyes were narrow, blue and red
You took a draw of breath and said to me
古い星が私の喉を満たしていく
それは生まれたころにあなたにもらったけど、いまにも外に出てきそう
病院のベッドに横になって、細められた目は、青く赤く
あなたはひと息吸うと、私に言った
You saw the masterpiece, she looks a lot like meWrapping my left arm around your right
Ready to walk you through the night
あなたはマスターピースを見た、彼女は私にそっくり
私は左腕をあなたの右腕にまとわせる
夜のなかあなたを歩かせる気だよ
Old friends, old mothers, dogs and brothersThere’s only so much letting go you can ask someone to do
So I keep you by my side, I will not give you to the tide
I’ll even walk you in my stride, Marie
なじみの友人たち、なじみの母親たち、犬たち、兄弟たち
だれかに手放すよう頼めることはいくらでもある
だから私はあなたを離さない、潮の流れにあなたをくれてやったりはしない
私の大また歩きにあなたをつきあわせさえするよ、マリー
'Cause I saw the masterpiece, she looks a lot like youWrapping your left arm around my right
Ready to walk me through the night
だって私はマスターピースを見たから、彼女はあなたにそっくり
あなたは左腕を私の右腕にまとわせる
夜のなか私を歩かせる気だね







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