アンナ・ツィマ『シブヤで目覚めて』(阿部賢一・須藤輝彦訳、河出書房新社、2021年)

「東欧の想像力」というシリーズがある。松籟社(しょうらいしゃ)という京都の小さな出版社が出しているシリーズで、「東欧」と呼ばれる地域の作家たちが書いた文芸作品の中から、えりすぐりのものを原語からの翻訳で紹介するという企画だ。僕は学生時 ...
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆、集英社、2024年)

例によってこのブログでは文芸書だけでなく話題の新書などを取り上げているが、この本はもうタイトルを見ただけで自分に刺さった。そして速攻でポチったのだが、例によってしばらくのあいだ積読の山のなかに埋もれることとなった。その理由はタイトルか ...
ジョン・ウィリアムズ『ストーナー』(東江一紀訳、作品社、2014年)

このところ、立て続けにアメリカの小説を読んでいる。ジュンパ・ラヒリの『低地』(The Lowland, 2013)、ジェスミン・ウォードの『骨を引き上げろ』(Salvage the Bones, 2011)、ジョン・オカダの『ノー・ノ ...
新田次郎『アラスカ物語』(新潮文庫、1980年)

新田次郎の『アラスカ物語』を読んだ。レイモンド・カーヴァーの作品に「アラスカには何があるのか?」(”What’s in Alaska?”)という短篇があるが、この本を読んだあとでは「フランク安田とい ...
イアン・マキューアン『恋するアダム』(村松潔訳、新潮社、2021年)

メディアでも頻繁に取り上げられるとおり、AI(人工知能)は世界各国が競って研究・開発競争を進めているところだし、いま一番ホットな分野であるといっても決して過言ではないだろう。僕自身は文系出身なのでテクニカルなことはほとんどわからないけ ...
平野啓一郎『ある男』(文春文庫、2021)

都城市で開催された平野啓一郎氏の講演会について書いたが、宮崎なので当然『ある男』の舞台設定のこともちらっと話に出てきた。なんでも、平野氏は執筆に際して西都に取材に訪れたのだが、文房具屋は市内に2軒しかなく、はっきり書いてしまうと関係者 ...
平野啓一郎『マチネの終わりに』(文春文庫、2019)

この年末年始に今さらながら平野啓一郎の『マチネの終わりに』を読んでみた。物語らしい物語があまり書かれなくなってきているこの時代に、小手先のテクニックではなくあくまでも物語の面白さで勝負する潔いタイプの作品で、読んでいてかなり引き込まれ ...
押見修造『ぼくは麻理のなか』メモ

*作品の根幹にあたる仕掛けについても言及しているので、これから作品を読んでみたい方は以下、ご注意ください。
かつて『I”s』という恋愛漫画があった。1997年~2000年にかけて週刊少年ジャンプに連載され、現在までに単行本 ...
村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社、2023年)その2

『街とその不確かな壁』について:その2
前回の考察のつづき。村上春樹の長篇はどれも「この世界とは何なのか」という問いがその核に位置していると思うのだが、『街』のように現実世界と非現実世界をいったりきたりする構成はそういった ...
村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社、2023年)その1

『街とその不確かな壁』について:その1
本当はずっと前に読み終えていたのだが、書くのが延び延びになってしまった。2017年の『騎士団長殺し』以来となる村上春樹の新作書きおろし長篇『街とその不確かな壁』を読んで感じたこと・考 ...