デイヴィッド・マークソン『ウィトゲンシュタインの愛人』(木原善彦訳、国書刊行会、2020年)
フランスの学者、ピエール・バイヤールが書いた愉快な本に『読んでいない本について堂々と語る方法』(ちくま学芸文庫、2016年)がある。タイトルだけみると安易なハウツー本みたいだし、じっさいこの本は国際的なベストセラーになった。それで釣ら ...
藤本タツキ『チェンソーマン』(第1部・公安編、1-11巻、集英社)
*『チェンソーマン』1-11巻全体のネタバレを含むので、作品を未読の方はご注意ください。
「まーオレたちゃ普通なんて夢の話だけどな」数日前に最終回が予告されファンがざわついている『チェンソーマン』の第1部・公安編(単行本1 ...
ロイド・ジョーンズ『ミスター・ピップ』(大友りお訳、白水社、2009年)
*例によってネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。
昨年末に『高慢と偏見』を読んだが、しばらくはイギリス文学をもうすこし掘り下げていきたいと考えている。とりあえず自分の課題図書に設定したのはディケンズの長篇群。 ...
ジェイン・オースティン『高慢と偏見』(阿部知二訳、河出書房新社、2006年)
このところ自分のなかでは古典がちょっとしたブームになっていて、ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』(Pride and Prejudice, 1813)をいまさらのごとく読んでみた。先日再読したチェーホフもそうだが、古典というのは自 ...
アントン・チェーホフ『かもめ・ワーニャ伯父さん』(神西清訳、新潮社、1967年)
ひさびさにチェーホフの戯曲を読みなおしてみた。選択肢としていまもっともスタンダードなのは『かもめ』であれば岩波文庫、『ワーニャ伯父さん』であれば光文社古典新訳文庫かもしれないが、いずれもロシア文学者である浦雅春氏による訳業だ。学生時代 ...
タリアイ・ヴェーソス『氷の城』(朝田千惠/アンネ・ランデ・ペータス訳、国書刊行会、2022年)
「ああ、これはすごい小説だ!」というのではなく、最初はうすぼんやりとしていた光景が、辛抱づよくカメラをのぞきこんでいるうちにすこしずつ像を結んでいく、そんな確かさをそなえた小説である。
学生のころはとにかくたくさん小説のこ ...
鈴木結生『ゲーテはすべてを言った』(朝日新聞出版、2025年)
*以下の文章は一部物語のネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。
世間的にはあまり耳なじみがないかもしれないが、小説の分野にはアカデミック・ノベルないしキャンパス・ノベルというジャンルが存在する。主人公は主として ...
クラスナホルカイ・ラースロー『北は山、南は湖、西は道、東は川』(早稲田みか訳、松籟社、2006年)
以前、アンナ・ツィマの『シブヤで目覚めて』(2021)を取り上げたとき、話の枕として松籟社(しょうらいしゃ)の話題から書きはじめたのだった。ワンパターンはよくないぞと知りつつ、今回もまたその話題からはじめよう。岩波書店や新潮社といった ...
ツェリン・ヤンキー『花と夢』(星泉訳、春秋社、2024年)
最近、自分のなかでアジアや中近東に対する関心がにわかに高まりつつある。先日、オルハン・パムクの『赤い髪の女』(2019)を読了した。ソフォクレスの『オイディプス王』(=ギリシア(西洋)の父殺しの物語)と『王書』のロスタムとソフラーブの ...
千早茜『ひきなみ』(角川書店、2021年)
僕は小説を読むのがわりと好きな人間だが、ジャンルとしては圧倒的に純文学が多い。これは読む本がたまたまそうなっているのではなく、かなり意識的に純文学を選ぶようにしているからである。といってしまうと「お高くとまってんじゃねえよ」と反感をも ...