新田次郎『アラスカ物語』(新潮文庫、1980年)
新田次郎の『アラスカ物語』を読んだ。レイモンド・カーヴァーの作品に「アラスカには何があるのか?」(”What’s in Alaska?”)という短篇があるが、この本を読んだあとでは「フランク安田とい ...
イアン・マキューアン『恋するアダム』(村松潔訳、新潮社、2021年)
メディアでも頻繁に取り上げられるとおり、AI(人工知能)は世界各国が競って研究・開発競争を進めているところだし、いま一番ホットな分野であるといっても決して過言ではないだろう。僕自身は文系出身なのでテクニカルなことはほとんどわからないけ ...
平野啓一郎『ある男』(文春文庫、2021)
都城市で開催された平野啓一郎氏の講演会について書いたが、宮崎なので当然『ある男』の舞台設定のこともちらっと話に出てきた。なんでも、平野氏は執筆に際して西都に取材に訪れたのだが、文房具屋は市内に2軒しかなく、はっきり書いてしまうと関係者 ...
平野啓一郎『マチネの終わりに』(文春文庫、2019)
この年末年始に今さらながら平野啓一郎の『マチネの終わりに』を読んでみた。物語らしい物語があまり書かれなくなってきているこの時代に、小手先のテクニックではなくあくまでも物語の面白さで勝負する潔いタイプの作品で、読んでいてかなり引き込まれ ...
押見修造『ぼくは麻理のなか』メモ
*作品の根幹にあたる仕掛けについても言及しているので、これから作品を読んでみたい方は以下、ご注意ください。
かつて『I”s』という恋愛漫画があった。1997年~2000年にかけて週刊少年ジャンプに連載され、現在までに単行本 ...
村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社、2023年)その2
『街とその不確かな壁』について:その2
前回の考察のつづき。村上春樹の長篇はどれも「この世界とは何なのか」という問いがその核に位置していると思うのだが、『街』のように現実世界と非現実世界をいったりきたりする構成はそういった ...
村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社、2023年)その1
『街とその不確かな壁』について:その1
本当はずっと前に読み終えていたのだが、書くのが延び延びになってしまった。2017年の『騎士団長殺し』以来となる村上春樹の新作書きおろし長篇『街とその不確かな壁』を読んで感じたこと・考 ...
『海街diary』の原作と映画版について
最近、吉田秋生の『海街diary』(全9巻、小学館)を読んだ。ふだんから漫画じたいそれほど読まないし、少女漫画といえば片手で数えられるくらいしか読んだことがないのだが、この作品は時が経つのも忘れて夢中で読みふけった。久々にいい作品に出 ...
稲田豊史『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ―コンテンツ消費の現在形』(光文社新書、2022)
あまり流行っている本には手を出したくないけれど、この本は自分自身が日々感じている問題とも関わりがあるから読んでみた。「現代ビジネス」に連載された9本の記事がもとになっているということで、章によっては互いに重なり合う記述があったり、やや ...
加藤典洋『村上春樹は、むずかしい』(岩波新書、2015)
2022年のノーベル文学賞はフランスの作家アニー・エルノーが受賞し、日本の村上春樹は今年も受賞を逃した。何ということもない毎年の恒例行事。マスコミやらハルキストやらが騒ぎ立てているだけで、村上本人がどう思っているのかはよくわからない。 ...