【歌詞対訳】”The Alcott (feat. Taylor Swift)” / The National
先日リリースされたアルバム『フランケンシュタインの最初の2ページ』(First Two Pages of Frankenstein, 2023)に収録。前作『アイ・アム・イージー・トゥ・ファインド』(I Am Easy to Find, 2019)から4年ぶりとなる新作だが、いつもながら聴けば聴くほどに奥行きが増していく滋味にあふれた作品だと思う。"The Alcott"はマット・バーニンガー自身と思われる中年男性の歌い手とそのパートナーが互いの問題や心のうちを明かしながら、再びゆっくりと愛を確認していく美しいピアノ・バラード。デュエットの相手を務めるのは、昨年『ミッドナイツ』(Midnights, 2022)をリリースして、いま脂がのりまくっているテイラー・スウィフトだが、彼女の声はマット・バーニンガーの単調なメロディに寄り添うようにぴったり調和していて、いまのところ今作の一番の聴きどころになる曲だと感じている。
ぜんぜん関係ない話を差し挟むと、僕はいま村上春樹の新作『街とその不確かな壁』を読んでいて、ようやく第二部にさしかかったところだが、第一部は17歳の「ぼく」と「きみ」の心の交流についての物語、そして「君」のいる壁に囲まれた街の図書館で<夢読み>として働く「私」の物語が交互に語られるかたちで展開していく。語り手の視点から「きみ」≒「君」に語りかける書き方が新鮮だ。"The Alcott"を聴いたとき、村上の新作の世界観とあまりにも似通っていることに気づき、おどろいた。以前から思っていることだが、マット・バーニンガーの抽象的でときに即物的な表現の仕方は非常に村上春樹的であり、片方は音楽でもう片方は散文でありながら、それらのテクスチャーはさながら上質なシルクのような柔らかさと包容力を獲得する方向に進みつつある。こんなふうに、読んでいるものと耳にするものが不思議な一致をみせることもときどき起こるものなのだ(余談だが、『街と』が英訳される場合、「ぼく」≒「私」、「きみ」≒「君」の人称の問題はどうやって処理されるのだろうか?)。
“The Alcott (feat. Taylor Swift)” (Written by Aaron Dessner, Matt Berninger and Taylor Swift)I get myself twisted in threads to meet
you at the Alcott
I go to the corner in the back where
you’d always be
And there you are sitting as usual
with your golden notebook
Writing something about someone
who used to be me
「ジ・アルコット」
自らを糸にからませる
アルコットで君に会うために
いつも君がいた
後ろの隅のほうに行く
そこにはいつものように君が座っている
金色のノートを手にして
かつて僕であった
誰かについての何かを書きつけている
And the last thing you wantedIs the first thing I do
I tell you my problems
You tell me the truth
It’s the last thing you wanted
It’s the first thing I do
I tell you that I think I’m falling
Back in love with you
君がもっとも望まなかったこと
それを僕は最初にやってしまう
君は僕に真実を告げる
それは君がもっとも望まなかったこと
それは僕が最初にやってしまうこと
僕は君に伝える なんだか落ちていくようなんだ
もう一度 君との恋に
I sit there silently waiting for you tolook up
I see you smile when you see it’s me
I had to do something to break into
your golden thinking
How many times will I do this and
you’ll still believe?
僕はそこに静かに腰をおろし
君が顔を上げるのを待っている
それが僕だとわかると微笑む君の顔
君の輝かしい考えに押し入るために
僕は何かしないといけなかった
いったい何回僕はこんなことをして
そのたびに君はまだ信じていられるだろう?
It’s the last thing you wantedTell me which side are you on, dear
It’s the first thing I do
Give me some tips to forget you
You tell me your problems
Have I become one of your problems?
And I tell you the truth
Could it be easy this once?
It’s the last thing you wanted
Everything that’s mine is a landmine
It’s the first thing I do
Did my love aid and abet you?
I tell you that I think I’m falling
Back in love with you
それは君がもっとも望まなかったこと
ねえ教えて、あなたはどっちの側なの、大切なひと
それは僕が最初にやってしまうこと
あなたを忘れるためのヒントをちょうだい
君は自分の問題を僕に話す
わたしはあなたの問題のひとつになってしまったの?
僕は君に真実を告げる
今度だけはすんなりいくの?
それは君がもっとも望まなかったこと
私のすることなすことはみんな地雷になってしまう
それは僕が最初にやってしまうこと
わたしの愛はあなたの助けに、幇助になったの?
僕は君に伝える なんだか落ちていくようなんだ
もう一度 君との恋に
And I’ll ruin it all overI’ll ruin it for you
I’ll ruin it all over
And over, like I always do
Why don’t you
I’ll ruin it all over
Rain on my parade
I’ll ruin it for you
Shred my evening gown
I’ll ruin it all over
Read my sentence out loud
And over, like I always do
Cuz I love this curse on our house
僕はすっかりダメにしてしまう
君のためにダメにしてしまう
僕はすっかりダメにしてしまう
すっかり、いつもやってしまうみたいに
私のパレードに
僕はすっかりダメにしてしまう
雨を降らせたら?
君のためにダメにしてしまう
私のイブニングドレスをびりびりに引き裂けばいい
僕はすっかりダメにしてしまう
大声で私のセンテンスを読み上げて*
すっかり、いつもやってしまうみたいに
私たちの家にかけられたこの呪いを愛しているのよ
*golden notebookに何かを書いている君だから「文章」とも訳せるし、君に対するひどいことの数々を列挙しているところだから、「刑」ともとれる。
It’s the last thing I wantedTell me which side are you on, dear
It’s the first thing I do
Give me some tips to forget you
I tell you my problems
Have I become one of your
problems?
And you tell me the truth
Could it be easy this once?
It’s the last thing I wanted
Everything that’s mine is a landmine
It’s the first thing I do
Did my love aid and abet you?
I tell you that I think I’m falling
Back in love with you
Back in love
Back in love with you
Back in love with you
それは僕がもっともの望まなかったこと
ねえ教えて、あなたはどっちの側なの、大切なひと
それは僕が最初にやってしまうこと
あなたを忘れるためのヒントをちょうだい
自分の問題を君に話す
わたしはあなたの問題のひとつになってしまったの?
君は僕に真実を告げる
今度だけはすんなりいくの?
それは君がもっとも望まなかったこと
私のすることなすことはみんな地雷になってしまう
それは僕が最初にやってしまうこと
わたしの愛はあなたの助けに、幇助になったの?
僕は君に伝える なんだか落ちていくようなんだ
もう一度 君との恋に
もう一度 恋に
もう一度 君との恋に
もう一度 あなたとの恋に
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