【歌詞対訳】”Don’t Swallow the Cap” / The National

2024年2月14日

6枚目のアルバム『トラブル・ウィル・ファインド・ミー』(Trouble Will Find Me, 2013)からのセカンド・シングル。本アルバムではスフィアン・スティーヴンズから借りたドラム・マシーンが使われているというエピソードが好きなのだが、それは地味ながらこの曲でも一定の効果をあげているように思う。ザ・ナショナル特有の穏やかな木漏れ日を想起させるサウンドに、マットの今にも消え入りそうなのに韻を踏みまくりでノリノリの歌がのっかる。"Don’t Swallow the Cap"(キャップを飲んではいけない)というタイトルは『欲望という名の電車』や『ガラスの動物園』といった戯曲で知られるアメリカの劇作家テネシー・ウィリアムズ(1911-83)に対する言及だとされている。晩年、彼はアルコールやドラッグ漬けになり目薬のキャップのようなものを喉につまらせて窒息死したのだった。ちなみに「シティ・ミドル」("City Middle", 3枚目のアルバム『アリゲーター』(Alligator, 2005)に収録)の中に"I think I’m like Tennessee Williams"という一節があるが、マットはウィリアムズの内向的かつ繊細な感情表現に大いに影響を受けているようだ。

“Don’t Swallow the Cap" (written by Aaron Dessner, Bryce Dessner and Matt Berninger)

Gold light breaks behind the houses,

I don’t see what’s strange about this.

Tiny bubbles hang above me.

It’s a sign that someone loves me.

I can hardly stand up right

I hit my head up on the light

I have faith but don’t believe it.

It’s not there enough to leave it.

「ドント・スワロー・ザ・キャップ(キャップを飲んではいけない)」

家並みのむこうに金色の光がパッと現れる

これの何がおかしいのか僕にはわからない

ちいさな泡が僕の上に浮かんでいる

これは誰かが僕を愛してくれているサインだ

ほとんどまっすぐ立ちあがれない

電気に頭をぶつけてしまう*

信仰はあるけど信じてはいない

捨ててしまえるほどそこにあるわけじゃない

*マット・バーニンガーは6.3フィート(191cm)の長身である。

Everything I love is on the table.

Everything I love is out to sea.

僕の大好きなものはみんなテーブルの上にある*

僕の大好きなものはみんな海へ流れていく

*テネシー・ウィリアムズの戯曲『ガラスの動物園』(The Glass Menagerie, 1947)を想起させる一節。ローラの大好きなガラスの動物たちはみんなテーブルの上にある。

I have only two emotions,

Careful fear and dead devotion.

I can’t get the balance right.

With my marbles in the fight.

I see all the ones I went for

All the things I had it in for

I won’t cry until I hear,

Because I was not supposed to be here.

僕にはふたつの感情しかない

念の入った恐怖と死んだ献身だ

戦いにおける僕の理性との*1

バランスをうまく保てない

僕が批判したすべての人たちが見える*2

恨みを抱いていたすべての物事が見える*3

聞こえるようになるまでは泣かないよ

僕はそもそもここにいるべきじゃなかったんだから

*1 marbles(理性、正気)は文字通りには「ビー玉」である。

*2 go for…「…を攻撃する、批判する」

*3 have it in for…「…に悪意、恨みを抱いている」

Everything I love is on the table.

Everything I love is out to sea.

I’m not alone.

I’ll never be.

And to the bone,

I’m evergreen.

僕の大好きなものはみんなテーブルの上にある

僕の大好きなものはみんな海へ流れていく

僕は一人ぼっちじゃない

決してそうはならない

骨の髄まで*

エヴァーグリーンだよ

*to the bone「骨の髄まで、徹底的に」

I’m tired, I’m freezing, I’m dumb

When it gets so late I forget everyone.

I need somewhere to stay.

I don’t think anybody I know is awake.

Calm down, it’s alright,

Keep my arms the rest of the night.

When they ask what do I see,

I say a bright white beautiful heaven hanging over me.

疲れてる、凍えてる、頭が回らない

あまり遅くなるとみんなのことを忘れてしまう

どこか居場所が必要なんだ

誰か知ってる人がまだ目を覚ましているとは思えない

落ち着け、大丈夫だ

朝になるまで武器を持っていよう

何が見えるかと訊かれたら

こう言おう まばゆいばかりに美しく輝く天国が頭の上に浮かんでいると

I’m not alone.

I’ll never be.

And to the bone,

I’m evergreen.

And if you want (dead seriously),

To see me cry (don’t swallow the cap).

Play Let It Be (pat yourself on the back)

Or Nevermind (dead seriously).

僕は一人ぼっちじゃない

決してそうはならない

骨の髄まで

エヴァーグリーンだよ

僕が泣くところを(本気で言ってるんだ)

もしきみが見たいなら(キャップを飲んではいけない)

『レット・イット・ビー』か(自分をほめてみろよ)

『ネヴァーマインド』をかけてくれ*(本気で言ってるんだ)

*言うまでもなく前者はビートルズのラストアルバム『レット・イット・ビー』(Let It Be, 1970)、後者はニルヴァーナのセカンド・アルバムにして全世界にグランジ・ブームを引き起こした『ネヴァーマインド』(Nevermind, 1991)を指す。

Is it time to leave? Is it time to think about

What I want to say to the girls at the door?

I need somewhere to be,

But I can’t get around the river in front of me.

Come down, it’s alright,

Leave my arms the rest of the night.

When they ask what do I see,

I say a bright white beautiful heaven hanging over me.

もう去っていく時間? 戸口に立っている女の子たちになんて

言ってあげたいか考える時間なのか?

どこかいる場所が必要なんだ

でも目のまえにある川をぶらつくことはできない

落ち着け、大丈夫だ

朝になるまで武器は置いておこう

何が見えるかと訊かれたら

こう言おう まばゆいばかりに美しく輝く天国が頭の上に浮かんでいると

I’m not alone (dead seriously).

I’ll never be (don’t swallow the cap).

And to the bone (pat yourself on the back),

I’m evergreen (dead seriously).

And if you want (dead seriously)

To see me cry (don’t swallow the cap),

Play Let It Be (pat yourself on the back)

Or Nevermind (dead seriously).

僕は一人ぼっちじゃない(本気で言ってるんだ)

決してそうはならない(キャップを飲んではいけない)

骨の髄まで(自分をほめてみろよ)

エヴァーグリーンだよ(本気で言ってるんだ)

僕が泣くところを(本気で言ってるんだ)

もしきみが見たいなら(キャップを飲んではいけない)

『レット・イット・ビー』か(自分をほめてみろよ)

『ネヴァーマインド』をかけてくれ(本気で言ってるんだ)