【歌詞対訳】”Laugh Track (feat. Phoebe Bridgers) / The National

2024年2月7日

10枚目のアルバム『ラフ・トラック』(Laugh Track, 2023)のタイトル曲。"laugh track"というのは、テレビのバラエティ番組やラジオなんかで差しはさまれる録音された観客の笑い声のことだ。アニメで表現されているビデオを見ていただければわかると思うが、ここではマット・バーニンガーとフィービー・ブリジャーズからなる中年の夫婦が話し合いによって互いの問題をさらけ出し、認め合い、建設的な解決に至ろうとしている。しかし、そこで提案されるのが"laugh track"(なんだか『君たちはどう生きるか』に出てくるワラワラみたいだ。といっても、ここでは「わらわら」出てくるだけじゃなくて「笑笑」なのだけど)をかけてみようじゃないか、ということなのが面白い。たしかに人生においては、ここで笑いの効果音を加えてみたらどうかみたいな、どうしようもなかったりどうにも作り物じみた場面に出くわすことがある。

“Laugh Track" (written by Aaron Dessner and Matt Berninger)

Losing my momentum, losing my mind

Not enough to mention, not enough time

I can’t even say what it’s about

All I am is shreds of doubt

「ラフ・トラック」

勢いを失くしつつある、正気を失いつつある

わざわざ触れることでもない、十分な時間もない

それが何のことなのか言うことすらできない

僕のすべては疑念の切れ端なんだ*

*shredとdoubtといえばふつうはnot a shred of doubt (=no doubt at all)「疑いは一片もない」となるが、ここではshreds of doubtなので疑いしかない。

And you don’t know how to deal with me

You don’t know how that feels

It all comes apart so easily

And you’re running out of ideas

君は僕をどう扱ったらいいかわからない

それがどんな感じなのか君にはわからない

それは本当に簡単にばらばらになってしまう

君はだんだん考えが尽きていく

Everything melted in less than a week

Watching it felt like forever

The lights started dimming

And then they went out

Heaven came down like a blanket

I can’t even say what it’s about

All I am is shreds of doubt

何もかもが一週間もしないうちに溶けてしまった

その様子をじっと見ているとまるで永遠のような気がした

光はぼんやりと暗くなりはじめ

やがて消えてしまった

天国はまるで毛布みたいに降りてきた

それが何のことか言うことすらできない

僕のすべては疑念の切れ端なんだ

So turn on the laugh track

Everyone knows you’re a wreck

You’re never this quiet, your smile is cracking

You just haven’t found what you’re looking for yet

ラフ・トラックをかけてくれ

君が参ってしまっているのはみんな知っている

君はこんなに静かじゃないはずだ、君の微笑みはひび割れていく*

君はまだ探しているものを見つけていないだけだ

*smileとcrackが出てきたらふつうはcrack a smile「わずかに、あるいは不意に微笑む」になるのだが、入れ替えるだけでまったく違う意味になる。

Turn on the laugh track

We’ll see if it changes the scene

Maybe this is just the funniest version

Of us that we’ve ever been

ラフ・トラックをかけてくれ

それで状況が変わるかどうかはじきにわかる

たぶんこれは僕たちの今までで

一番笑えるバージョンなんだ

I think our feet are gonna slip

I think our hands are gonna shake

I think our eyes are gonna cry

I think our hearts are gonna break

僕たちの足は滑ると思う

僕たちの手は握手すると思う

僕たちの目は泣くと思う

僕たちの心は傷つくと思う

Maybe we’ll never lighten up

Maybe this isn’t gonna quit

I think it’s never coming back

Maybe we’ve always been like this

たぶん僕たちは決して明るくならない*

たぶんこれは離れていかない

それは決して戻ってこないだろう

たぶん僕たちはいつでもこんな感じ

*lighten upは口語で「物事を深刻に考えないようにする」の意味。

So turn on the laugh track

Everyone knows you’re a wreck

You’re never this quiet, your smile is cracking

You just haven’t found what you’re looking for yet

ラフ・トラックをかけてくれ

君が参ってしまっているのはみんな知っている

君はこんなに静かじゃないはずだ、君の微笑みはひび割れていく

君はまだ探しているものを見つけていないだけだ

Turn on the laugh track

We’ll see if it changes the scene

Maybe this is just the funniest version

Of us that we’ve ever been

ラフ・トラックをかけてくれ

それで状況が変わるかどうかはじきにわかる

たぶんこれは僕たちの今までで

一番笑えるバージョンなんだ

I think our feet are gonna slip

I think our hands are gonna shake

I think our eyes are gonna cry

I think our hearts are gonna break

僕たちの足は滑ると思う

僕たちの手は握手すると思う

僕たちの目は泣くと思う

僕たちの心は傷つくと思う

So turn on the laugh track

Everyone knows you’re a wreck

You’re never this quiet, your smile is cracking

You just haven’t found what you’re looking for yet         

ラフ・トラックをかけてくれ

君が参ってしまっているのはみんな知っている

君はこんなに静かじゃないはずだ、君の微笑みはひび割れていく

君はまだ探しているものを見つけていないだけだ

Turn on the laugh track

We’ll see if it changes the scene

ラフ・トラックをかけてくれ

それで状況が変わるかどうかはじきにわかる