【歌詞対訳】”Hope Is a Dangerous Thing for a Woman Like Me to Have – But I Have It” / Lana Del Rey
6作目のアルバム『ノーマン・ファッキング・ロックウェル!』(Norman F****** Rockwell! 2019)のラストナンバー。サードシングルでもある。英文和訳の問題で出てきそうな雰囲気のこの長ったらしいタイトルは、映画『ショーシャンクの空に』(The Shawshank Redemption, 1994)において、レッド(モーガン・フリーマン)がアンディ(ティム・ロビンス)に対して忠告する“Hope is a dangerous thing. Hope can drive a man insane.”というセリフからとられたものと思われる。
ラナ・デル・レイといえば、いまではうたがいの余地なくアメリカを代表するポップアイコンのひとりだが、その音楽はわれわれ日本人には相当にむずかしい。2012年のメジャーデビュー作『ボーン・トゥ・ダイ』(Born to Die)ではみずからが「サッドコア」と呼ぶ、もの悲しいオールディーズにヒップホップ風味を加えたようなキャッチーなサウンドで人気を博した(ついでにいうと、オールディーズ風のメロディ+ヒップホップビートの組み合わせは、ゼロ年代なかばに一足先にデビューしたエイミー・ワインハウスが流行らせたものである)。
しかしキャッチーで耳に残りはしても、歌詞にはアメリカの文化や風俗からの引用が顕著にちりばめられており、その一つひとつについての理解がないと彼女がなにを歌っているのかよくわからないという作風もすでにデビュー時から確立している。この曲でいうと"24/7 Sylvia Plath"は重要なキーフレーズだが、日本人でシルヴィア・プラスの名前を知っているのは米文学を専攻した人か、相当な海外文学ファンのどちらかにかぎられるだろう。アメリカを中心に英語圏には非常なコアなファンがいる一方で、日本ではほぼ評価されていないという極端な温度差は、主にこの点に由来するのではないかと思う。
『ボーン・トゥ・ダイ』はいかにも売れ線ねらいのキッチュでポップな作品だが、これは彼女のキャリア全体からすると相当に異色といってさしつかえなく、本来の彼女が志向する音楽はこのようなシンプルなものだと個人的には思っている。カトリックとして育てられ、小学校時代に教会の聖歌隊で歌っていたという経歴からわかるように、彼女にとってキリスト教は重要なモチーフのひとつとなっている。
“Hope Is a Dangerous Thing for a Woman Like Me to Have – But I Have It"(written by Lana Del Rey and Jack Antonoff)
I was reading Slim Aarons and I got to thinking that I thought
Maybe I’d get less stressed if I was tested less like
All of these debutantes
Smiling for miles in pink dresses and high heels on white yachts
But I’m not, baby, I’m not
No, I’m not, that, I’m not
「希望は私のような女がいだくには危険なもの ― でも私は希望をいだく」
私はスリム・アーロンズを読んでいて、こんなふうに思いはじめた*
ピンクのドレスに身をつつんで微笑みながら何マイルも歩き、ハイヒールを履いて白いヨットに乗っている、
こうしたすべての上流社交界の娘みたいに
試されることが減ればたぶんストレスも減るんじゃないかと
でも私はちがう、ベイビー、私はちがう
いいえ、私はちがう、そうじゃないの、私は
*アメリカの写真家(1916-2006)。社交界や上流階級のライフスタイルを写した作品で知られる。
I’ve been tearing around in my fucking nightgown24/7 Sylvia Plath
Writing in blood on my walls
'Cause the ink in my pen don’t work in my notepad
Don’t ask if I’m happy, you know that I’m not
But at best, I can say I’m not sad
'Cause hope is a dangerous thing for a woman like me to have
Hope is a dangerous thing for a woman like me to have
私はこのろくでもないナイトガウンを着たまま興奮してうろつきまわっている*1
24/7 シルヴィア・プラス*2
私の壁のうえに血で書きつけられた文字
だって私のペンのインクでは私のメモ帳には役にたたないから
幸せかどうかなんて聞かないでよ、そうじゃないのはわかってるでしょ*3
でも一番いいことに、悲しくはないといえる
だって希望というのは私のような女がいだくには危険なものだもの
希望は私のような女がいだくには危険なもの
*1 tear around「興奮に落ち着きを失ってうろつきまわる、乱脈な生活をする」
*2 Sylvia Plath(1932-63):アメリカの詩人。詩集『エアリアル』(Ariel, 1965)や小説『ベル・ジャー』(The Bell Jar, 1963)などで知られる。その人生の大半はうつ病との闘いであり、63年に自らの手でこの世を去った。24/7(twenty-four seven)は「24時間7日間」というところから「年中無休」「四六時中」という意味になる。
*3 残念ながら出典はよくわからないがネットで調べると“I may never be happy, but tonight I am content.”というプラスのことばが見つかる。
I had 15-year dancesChurch basement romances, yeah, I’ve cried
Spilling my guts with the Bowery Bums
Is the only love I’ve ever known
Except for the stage, which I also call home, when I’m not
Serving up God in a burnt coffee pot for the triad
Hello, it’s the most famous woman you know on the iPad
Calling from beyond the grave, I just wanna say, “Hi, Dad"
私は15年ダンスをしていた
教会の地下でのロマンスも経験した、そうね、泣いたわ
バワリー・バムたちに自分のいっさいをぶちまけること*1
それが私の知ったたったひとつの愛よ
ステージは別だけど、そこはまた私の家なの、
3人組に焦げたコーヒーポットに入った神を出そうとしていないときはね*2
ハロー、iPadでいちばん有名な女性が
お墓の向こう側から呼んでる、私が言いたいのはただひとこと、“Hi, Dad”
*1 spill one’s guts「自分の問題を打ち明ける、自分自身をさらけだす」
*1 the Bowery Bums:ニューヨーク市のバワリー街(安酒場や安宿のある地域)でみられるホームレスやアルコール中毒者たちを指す。
*2 triad:3人組、三つ組とはキリスト教の文脈でいけば父なる神・子なるイエス・聖霊の「三位一体」を指す。ラナのパーソナルな経験でいくと、カトリック信仰・(デビューアルバムLana Del Rayのマーケティングを支援した)父親・(彼女自身がティーンエイジャーのころ経験した)薬物およびアルコール中毒を連想させもする。なお“a burnt coffee pot”とあるが、彼女はウェイトレスとして働いていた経験があるし、アルコール依存症治療のため参加したアルコホーリクス・アノニマス(Alcoholics Anonymous:アルコール依存症の解決を目指す世界的な自助グループ)の集会のことを指しているとする解釈も存在する。
I’ve been tearing up town in my fucking white gownLike a goddamn near sociopath
Shaking my ass is the only thing that’s
Got this black narcissist off my back
She couldn’t care less, and I never cared more
So there’s no more to say about that
Except hope is a dangerous thing for a woman like me to have
Hope is a dangerous thing for a woman with my past
私はこのろくでもない白のガウンを着て町をうろつきまわっている
バカみたいに近くにいる社会病質者みたいに
ケツを揺らすことでしかこの黒いナルシシストを*1
私の背中から追い払うことはできなかった
彼女はまったく気にかけなかったし、私は最大限に気にかけていた*2
だからそれについてもうこれ以上いうことはない
でも希望というのは私のような女がいだくには危険なもの
希望は私のような過去をもった女には危険なもの
*1 black narcissistを代名詞のsheで受けているあたり、1947年のイギリス映画『黒水仙』(Black Narcissus)のイメージを借用しているのだろうか。narcissistやnarcissismの語源はギリシア神話のNarcissus(ナルキッソス:水に映った自分の姿にあこがれて溺死し水仙の花になった美青年)である。
*2 couldn’t care lessはdon’t careを強調した言い方。
There’s a new revolution, a loud evolution that I sawBorn of confusion and quiet collusion of which mostly I’ve known
A modern day woman with a weak constitution, 'cause I’ve got
Monsters still under my bed that I could never fight off
A gatekeeper carelessly dropping the keys on my nights off
私は新しい革命、騒々しい進化を目にした
それは私も大部分を知っている混乱や静かな共謀から生まれた
生まれつき弱い体質をもった現代の女性、なぜなら私のベッドの下にはいまでも
追い払うことができない怪物がいるから*
私が休みの夜にうっかり鍵を落としていく門番
*「ベッドの下の怪物」という言い回しはもともと布団しかない日本ではなじみがないものだが、西洋では「言うことをきかないとベッドの下の怪物に連れていかれるよ」というような形で子どもたちを怖がらせるのにつかわれる(ブギーマンの派生形のひとつとされる)。そこから、ネガティヴな感情や恐怖、抑圧などを表す。
I’ve been tearing around in my fucking nightgown24/7 Sylvia Plath
Writing in blood on your walls
'Cause the ink in my pen don’t look good in my pad
They write that I’m happy, they know that I’m not
But at best, you can see I’m not sad
But hope is a dangerous thing for a woman like me to have
Hope is a dangerous thing for a woman like me to have
私はこのろくでもないナイトガウンを着たまま興奮してうろつきまわっている
24/7 シルヴィア・プラス
あなたの壁の上に血で書きつけられた文字
だって私のペンのインクは私のメモ帳には似合わないから
私は幸せだと書かれるけど、そうじゃないのはわかってるはず
でも一番いいことには、ごらんのとおり悲しんではいない
でも希望というのは私のような女がいだくには危険なもの
希望は私のような女がいだくには危険なもの
Hope is a dangerous thing for a woman like me to haveBut I have it
Yeah, I have it
Yeah, I have it
I have
希望は私のような女がいだくには危険なもの
でも私には希望がある
そうよ、私には希望がある
そうよ、私には希望がある
私には







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