【歌詞対訳】”Kiss Them for Me” / Siouxsie and the Banshees

2025年12月13日

10枚目のアルバム『スーパースティション』(Superstition, 1991)に収録。スティーヴィー・ワンダーではない(サムネイル画像はベスト盤『スペルバウンド』(Spellbpund, 2015))。スージー・アンド・ザ・バンシーズ、スタジオアルバムを集めるほどのファンじゃないのでベスト盤を聞いてすませていたのだが、なぜか最近そのよさに気づいた。どうでもいいけど、Siouxsieっていうスペリングがむずかしい。

スージー・スーこと、スーザン・バリオンを紅一点とするこのバンドの結成は1976年。今でこそ女性ロックミュージシャンというのは珍しくもなんともないけれど、その存在が本格的に世に出はじめたのはようやく70年代に入ってからである。軽くまとめてみるとボニー・レイットのデビューが71年、ザ・ランナウェイズの結成が75年(チェリー・ボム!)、パティ・スミスのデビューがおなじく75年、ブロンディの結成が76年とまあ、こういった感じだ。そのなかでもこのバンドはゴシック・ロックの草分けであり、同時代のアーティストだけでなく、80年代後半から90年代にかけて出てきた下の世代のオルタナ勢にも多大な影響をおよぼしている(詳しくはWikipediaでも見ていただければ)。たんなるキワモノではけっしてないということだ。ちなみにアメリカにセレブレーションという呪術的?なインディーロックバンドがあって、自分のなかではちょっとイメージが重なる(知っていたらあなたはまちがいなくロックマニアです)。

“Kiss Them for Me"はマリリン・モンローと並んで50年代のセックス・シンボルだった女優、ジェーン・マンスフィールド(Jayne Mansfield, 1933-67)へのオマージュ・ソング。タイトルは1957年の映画『よろめき休暇』(Kiss Them for Me)からとられている。ちなみにビートルズメンバーはみんな『女はそれを我慢できない』(The Girl Can’t Help It, 1956)を見て彼女に影響を受けたそうだが(なにせボンキュッボン(死語)ですから)、このバンドにとっては音楽的にあらたな局面を切り開くインスピレーションとなった。マンスフィールドをテーマにしているということもあって、アメリカではビルボード23位と健闘。さらにミュージックビデオをみてもわかるとおり、当時イギリスで流行していたアジア音楽の要素も取り入れて(ちなみにこの曲でタブラを叩いているタルヴィン・シン(Talvin Singh)は90年代はじめのUKアジアン・サウンドブームの立役者的存在)、マンスフィールド+インド?というちょっとよくわからないことをやってくれている。さすが一筋縄ではいかないバンド。

“Kiss Them for Me”

(written by Susan Ballion, Peter Edward Clarke, Martin McCarrick and Steven Severin)

It glittered and it gleamed

For the arriving beauty queen

A ring and a car

Now you’re the prettiest by far

No party she’d not attend

No invitation she wouldn’t send

Transfixed by the inner sound

Of your promise to be found, oh

「キス・ゼム・フォー・ミー」

それはきらめいた、それは輝いた

やがて到着する美人コンテストの女王のために

指輪に車

いま並ぶものがなく美しいのはあなた

彼女が足を運ばないパーティーはひとつもなく

彼女が送らない招待状は一通もない

見出される運命にあるあなたの約束が*

内側でなりひびく音にくぎづけよ

*マンスフィールドが主演した1963年のセックス・コメディ映画Promises! Promises!を連想させる。

Nothing or no one

Will ever make me let you down

わたしがあなたをがっかりさせる?

そんなことは決してだれにも、なににもできない

Kiss them for me, I may be delayed

Kiss them for me, if I am delayed

わたしの代わりにあの人たちにキスして、遅れるかもしれないから

わたしの代わりにあの人たちにキスして、もし遅れたら

It’s divoon, oh, it’s serene

In the fountain’s pink champagne

Someone carving their devotion

In the heart-shaped pool of fame, oh

噴水のピンクのシャンパンでは

それはとても素敵ディヴォーン、それは静穏*1

あの有名なハート型のプールには*2

だれかが人びとの忠誠を刻み込んでいる

*1 “divoon”は“divine”をわざとふざけてきどった発音をしたもので、マンスフィールドのキャッチフレーズだった。ちなみにこの“divine”は女性語で“very pleasant”とか“good”の意味。

*2 ビデオでも大々的にフィーチャーされているが、ハート型のプールはマンスフィールドのシンボル。

Nothing or no one

Will ever make me let you down

わたしがあなたをがっかりさせる?

そんなことは決してだれにも、なににもできない

Kiss them for me, I may be delayed

Kiss them for me, I may find myself delayed

わたしの代わりにあの人たちにキスして、遅れるかもしれないから

わたしの代わりにあの人たちにキスして、もし遅れたら

On the road to New Orleans

A spray of stars hit the screen

As the tenth impact shimmered

The forbidden candles beamed, oh

ニューオーリーンズへと至る道では

星の雨がフロントガラスを打った*

十番目の衝撃がちらちら光ると

禁じられたろうそくが照り輝いた

*screenは(英)では「フロントガラス」の意味。(米)ではwindshieldなどという。なおマンスフィールドは1967年にニューオーリーンズに向かう途中で自動車事故に遭い亡くなっている。

Kiss them for me, I may be delayed

Kiss them for me, I may find myself delayed

Kiss them for me, kiss them for me

Kiss them for me, I may find myself delayed

わたしの代わりにあの人たちにキスして、遅れるかもしれないから

わたしの代わりにあの人たちにキスして、ひょっとして遅れるかもしれないから

わたしの代わりにあの人たちにキスして、キスしてあげて

わたしの代わりにあの人たちにキスして、ひょっとして遅れるかもしれないから