【歌詞対訳】”Something Cool” / June Christy

2025年9月5日

1955年のアルバム『サムシング・クール』(Something Cool)のタイトル・トラック。ジューン・クリスティというクールジャズを代表するシンガーのトレードマークといえる曲(オリジナルはモノラル録音で、1960年には再録音されたステレオ盤がリリースされた)。個人的に、"something cool"というと、うしろに"to drink"をつけて「なにか冷たい飲み物」の意味になるのだと、中学校の英語の授業で教わった風景が頭にうかんでくる。このto不定詞の項目は中学生にはややつまずきやすいところ。1950年代なかばのアメリカの夏はwarmだったのかもしれない。が、2025年の日本列島は、明日から9月、夏の終わりといっていい時期にさしかかるというのに、毎日毎日terribly hotである。まだしばらくはこの歌が似合う時期がつづくだろう。

“something cool"は「なにか冷たいもの」という意味だけでなく、たばこを勧められるところでは「クールな人」、そして最後の一節では「冷ややかな気持ち」という意味とかけて用いられているように思う。なんともしゃれた一曲だが、ジューン・クリスティの歌い方はどちらかというとけだるげだ。なお、彼女自身かなりの酒豪で、それが原因ですこしずつ歌手生命を縮めていったらしい。それを知ったうえで聴くと、かつて裕福で男たちにさぞもてていたのであろう女性の没落をえがいているこの歌は、なんとも哀愁が深まるかんじがする。どうしてパリに行ったのが秋なのか? それはもちろん"fall"が没落や失墜を意味する語でもあるからだ。そして女性の胸には冷たいものが残された。

“Something Cool” (written by Billy Barnes)

Something cool

I’d like to order something cool

It’s so warm here in town

And the heat gets me down

Yes, I’d like something cool!

「サムシング・クール」

サムシング・クール

なにか冷たいもの(サムシング・クール)をいただこうかしら

この町はとっても暑くて

こんな熱気には参ってしまうわ

ええ、なにか冷たいものがいいの!

My! It’s nice to simply sit and rest awhile

Now I know it’s a shame

I can’t think of your name

I remember your smile!

いいわね、ただこうやって座って休んでいられるのは

でも残念なことだわ

あなたの名前を想像もできないだなんて

あなたの微笑みはおぼえているのに!

I don’t ordinarily drink with strangers

I most usually drink alone

But you were so awfully nice to ask me

And I’m so terribly far from home

ふだんは知らない人と飲んだりしないのよ

たいていは一人で飲むの

でも誘ってくれたあなたはものすごくいい人ね

私ったらどうしようもないくらいうちから遠くまで来ちゃった

Like my dress? I must admit it’s very old

But it’s simple and neat

It’s just right for the heat

Save my furs for the cold!

このドレス好き? 白状するとすごく古いやつなの

でもシンプルでこざっぱりしてて*

こんな暑い日にはまさにぴったりよ

寒いときのための毛皮はべつだけど!

*neatは「(酒などを)水で割らない、ストレートの」という意味もある。

A cigarette? Well I don’t smoke them as a rule

But I’ll have one

It might be fun

With something cool!

たばこ? 私、いつもは吸わないの

でも一本いただこうかしら

おもしろいかもね

クールな人(サムシング・クール)といっしょなら!

I’ll bet you couldn’t imagine

That I one time had a house

With so many rooms I couldn’t count them all!

あなたに想像できるわけないわ

昔、私には家があって

それはぜんぶ数えきれないくらいたくさんの部屋があったってこと!

I’ll bet you couldn’t imagine

I had fifteen different beaus

Who would beg and beg to take me to the ball

あなたに想像できるわけないわ

私にはいろいろな男の人が15人いて

ダンスパーティーに行こうとそれはしきりにせがまれたものだった!

I’ll bet you couldn’t picture me

The time I went to Paris in the fall

And who would think the man I loved was quite so handsome

Quite so tall?

あなたに思いえがけるはずないわ

秋にパリに行ったときの私を

私の恋した男がこんなにもハンサムでこんなにも背が高かったと

いったい誰が思うかしら?

Well it’s true

It’s just a memory I have

One I almost forgot

'Cause the weather’s so hot!

And I’m feeling so bad

About a date

Oh wait!

I’m such a fool!

He’s just a guy

Who’s stopped to buy

Me something cool!

ええ、本当の話よ

いまじゃただの思い出だけどね

それももう忘れかけている

だってこんなに暑いんだもの!

デートなんて

しちゃいけないなと感じているのよ

あっ、ちょっと待って!

私、なんてばかなのかしら!

あの人はただ

ちょっと立ち寄って

私に冷たいもの(サムシング・クール)を買ってくれただけなのに!