【歌詞対訳】”Nouel” / Laura Marling
6枚目のアルバム『センパー・フェミナ』(Semper Femina, 2017)に収録。ラテン語のアルバム名を現代英語になおすと“always woman”といった意味になるだろう。これは古代ローマの詩人ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』第4巻からの一節、おおまかに訳せば「女はつねに気まぐれでうつろいやすいもの」という部分からの借用。「女性」をテーマにしたコンセプトアルバムのなかで歌詞に“semper femina”というキーフレーズが含まれているのがこの曲である。
ローラ・マーリング(1990-)はイングランド出身のシンガーソングライターで、2008年にアルバム『アラス、アイ・キャンノット・スウィム』(Alas, I Cannot Swim)でデビュー。バンドに在籍していた縁でノア・アンド・ザ・ホエールのチャーリー・フィンクがプロデューサーを務め、さらにマムフォード&サンズのフロントマン、マーカス・マムフォードも参加しているという、まったく無名の新人にしては破格のプロダクション。しかし作品はあくまで朴訥としていて飾り気がない。最新作『パターンズ・イン・リピート』(Patterns in Repeat, 2024)を含めて8枚のソロアルバム、ランプ(Tunngのマイク・リンジーとのデュオ)名義で2枚のアルバムをリリースしている。
ローラの音楽の最大の特徴は、そのエイジレスな声にあるというのが僕の意見である。さすがにいま初期の作品を聞いたら若々しさを感じるけれど、それでも年齢不相応といってもいいほど落ち着いていて大人っぽく、独特の憂いをおびた歌声はファーストの時点からすでに特別な存在感を主張している。そんな彼女の歌は作品を出すごとにより深みを増していくのだ。
でも正直、最初の5枚のアルバムに関してはもうちょっとなにか突き抜けたものがあるといいのになと感じていた。けっして悪くはないし、どのアルバムにもお気に入りが数曲ずつあるけれど、ちょっと地味すぎる。ジョニ・ミッチェルと何がちがうのかと聞かれてもうまく答えられないというか。それが、この『センパー・フェミナ』以降は変わってきた。パーソナルな側面が強くなるだけでなく、彼女自身がほんとうに表現したいことが歌にあらわれているような気がするのだ。
「ノウエル」という女性への思慕をあらわした歌であり(ノエル(Noel)ではない)、これはローラがロサンジェルスに住んでいた2013年頃にじっさいに知り合ったノウエルという女性がモデルになっているそうだが、どうも特定の女性というよりは「女性なるもの」の象徴のように思える(それに部分的には自分自身について歌っているのだとも)。いちばん最後に“My only guiding star”という表現がでてくるが、このノウエルこそは歌い手であるローラが慈愛とともに身をささげ、彼女自身をも導いていくミューズなのだろう。
“Nouel" (written by Laura Marling)She sings along to sailor’s song
In a dress that she made
When she’s gone I sing along
But it doesn’t sound the same
「ノウエル」
彼女は自分で作ったドレスを着て
船乗りの歌にあわせて歌う
彼女がいないときは私が歌う
でも同じようには聞こえない
Oh Nouel, you sing so wellSing only for me
Fickle and changeable
Though I may always be
ああノウエル、あなたは歌が上手だわ
私のためだけに歌ってよ
気まぐれで変わりやすい
私はいつだってそうかもしれないけど
I pulled a thorn from her tiny pawHer feet were unclean
Fetch water, blessed twice
And hand a sponge to me
私は彼女のちいさな手からとげを抜いてあげた*
彼女の足は不潔だった
水をもってきて、二度祝福されたものよ
それからスポンジを私にちょうだい
*pawは「犬や猫などのかぎづめのある足」を表すことばであり、これを人に対して用いると「ごつい」(不器用な)手といった否定的なニュアンスが加わる。
I do well to serve NouelWhatever service I may be
Fickle and changeable
Weighing down on me
私はノウエルに尽くすのがいいだろう*
私にできそうな奉仕ならなんでも
気まぐれで変わりやすい
私に重くのしかかってくる
*do well to do「…するのがよい、賢明である」
She speaks a word and it gently turnsTo perfect metaphor
She likes to say I only play
When I know what I’m playing for
彼女がひとつの言葉を発すると、それは徐々に
完璧な暗喩に変わる
あなたはただ戯れているだけだと彼女は好んでいう
なんのために戯れているか私にわかっているときに
Oh Nouel, you know me wellAnd I didn’t even show you the scar
Fickle and changeable
Semper femina
ああノウエル、私のことはよくわかってるでしょ
あなたに傷跡を見せもしなかったけど
気まぐれで変わりやすい
いつまでも女でいる
She’d like to be the kind of freeWoman still can’t be alone
How I wish I could hit the switch
That keeps you from getting gone
彼女は自由になりたがっている
女というものはいまだにひとりになれない
スイッチを押せたらいいのにとどれだけ願うことか
あなたが消えてしまわないようにするスイッチを
Oh Nouel, it hurts like hellWhen you’re so afraid to die
Semper femina
So am I
ああノウエル、たまらなく胸が痛むのよ
あなたがそんなにも死ぬことを恐れていると
いつまでも女でいる
私だって同じ
She lays herself across the bedThe Origine du monde
Slight of shoulder, long and legged
Her hair a faded blonde
彼女はベッドに大の字に横たわる
世界の起源*
肩はほっそりしていて、脚が長い
彼女の髪は色あせたブロンド
*フランスの画家ギュスターヴ・クールベ(1819-77)による『世界の起源』(L’Origine du monde)への言及。裸で横たわる女性の性器に焦点をあてたスキャンダラスな作品。
Oh Nouel, you sit so wellA thousand artists’ muse
But you’ll be anything you choose
Fickle and changeable are you
And long may that continue
ああノウエル、あなたはきちんとポーズをとるのね
千人の芸術家たちのミューズ*
でもあなたは選べばなんにでもなれるのよ
気まぐれで変わりやすいあなた
どうかそれがいつまでも続きますように
*芸術家にとってインスピレーションの源となる女性、あるいは女性の姿であらわされる力のこと。
I do well to serve NouelMy only guiding star
Semper femina
私はノウエルに尽くすのがいいだろう
私のたったひとつの導きの星
いつまでも女でいる








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