【歌詞対訳】”Lovely Joan” / Fokal Point
アルバム『フォーカル・ポイント』(Fokal Point, 1972)に収録。英国のフォークグループ、フォーカル・ポイントが残した唯一のアルバムだが、2025年11月現在でこれを入手するのはきわめて困難とおもわれる。僕はこのなんとも愛らしい、しかしそれでいて昔の田舎はどこもおそろしいな……とあらため思わされる民謡を偶然YouTubeで発見した。メロディはレイフ・ヴォーン・ウィリアムズの「グリーンスリーヴズによる幻想曲」で用いられているのでなじみがあるが、そのもとになったこの曲は知らなかった。牧歌的なバラッドかと思って聞いていたのだが、えっ、こんなオチなのかと笑。指輪をひとつあげるから処女をくれという男をうまく出し抜き、うばった馬で本当の恋人のもとにかけこむ少女。トマス・ハーディの小説にえがかれるような典型的なイングランドの田舎の風景がうかんでくる。
“Lovely Joan” (Traditional)A fine young man it was indeed
All mounted upon his milk-white steed
He rode and he rode, he rode all alone
Until he met sweet lovely Joan
「ラヴリー・ジョーン」
それはまさしくりっぱな若者だった
牛乳のように白い彼の馬を乗りこなしていた*
馬に乗って彼はどこまでもいった、まったくひとりぼっちで
そうして愛らしいジョーンに出会った
*steed「(乗馬用の)馬」を意味する古いことば。
“Good morning to you, my pretty young maid”And, “Twice good morning to you, Sir,” she said
He gave her a wink, but she rolled her dark eye
Said he to himself, “I’ll be there by and by”
「おはよう、僕のかわいいお嬢さん」
「おはようございます、旦那さま」と少女*1
彼は少女にウインクしたが、彼女はその黒い瞳をくるりと回した*2
彼はひとりごちた、「また近いうちにあそこへ行こう」*3
*1 good morningはもちろん「おはようございます」の意味だが、字義どおりには「よい朝」である。ここでのtwiceはgoodにかかっているため、直訳すると少女は「あなたに二倍のよき朝がありますことを」と返している。
*2 roll one’s eye(s)「目玉をぐるりと動かす」小林祐子(編著)『しぐさの英語表現辞典』(研究社、1991年)を引いてみると、このしぐさから英米人がまず連想するのは恐怖の感情であるとされている。というのは、物理的に黒目を動かすと白目の部分が大きく露出し、これが恐怖とむすびつくからである。とはいえこの表現はじつにさまざまな感情をあらわすもので、ここで少女が動かしているのは片目であることからしても、少女っぽい媚びを示した目つきという解釈が妥当であろう。
*3 by and by「やがて、まもなく」(before long)
“Oh, don’t you think those pooks of hayWill make a pretty place for us to play
So come with me, my pretty young thing
And I will give you my golden ring”
「ああ、あの干し草の山が僕たちがたわむれるのに*1
ちょうどいい場所になると思わないかい
僕といっしょに来てくれよ、僕のかわいいお嬢さん*2
そしたらこの金の指輪をあげよう」
*1 pooks of hay “pook”は標準的な英語だと“pile”や”heap”などを意味するイングランド南西部の方言。
*2 マイケル・ジャクソンの“P.Y.T. (Pretty Young Thing)”などが好例と思われるが、くだけた言い方では人にたいしても“thing”を用いる。特に親しみや愛情をこめて女性や子どもに呼びかける際など。
He took off his ring, his ring of goldAnd said, “My pretty young fair miss, do thee behold
I will give it freely for your maidenhead"
And her cheeks they blushed like the roses red
彼は指輪を、金の指輪をはずし
こう言った、「僕のかわいいお嬢さん、ごらんあれ*1
僕はこれをよろこんで君の純潔にささげる」*2
彼女の頬は赤いばらのようにぱっと赤らんだ
*1 theeはyouの古い形で、場合によっては「汝、そなた」などとも訳す。
*2 maidenheadは「処女膜」(hymen)を意味する古いことばだが、ここではもちろん「処女であること、純潔」(virginity)を指す。
“Come give that ring into my handAnd I will neither stay nor stand
For your ring is worth much more to me
Than twenty maidenheads," said she
「わたしの手にその指輪をください
そうすればわたしはとどまりも、立ちつくしもしません
あなたさまの指輪は二十の純潔よりも
ずっとわたしにはだいじものなのですから」と少女は言った
So, as he made his way to the hayShe leapt on his horse and rode away
She rode and she rode, she rode all alone
And that was the last he saw of Joan
そうして彼が干し草のほうへ歩み寄ると
少女は彼の馬にとびのって駆けていった
馬に乗って彼女はどこまでもいった、まったくひとりぼっちで
彼がジョーンを見たのはそれが最後だった
But nigh did she think herself quite safeUntil she came to her true love’s gates
She robbed him of his horse and his ring
And left him in a rage in the meadows green
けれどもう大丈夫だと思うと*
ついに少女は本当の恋人の門にたどりついた
彼女は彼から馬と指輪をうばった
そして怒れる彼を緑の牧草地におきざりにした
*nigh(古・方言)「近く、ほとんど、ほぼ」








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