【歌詞対訳】”Revelator” / Gillian Welch
3枚目のアルバム『タイム(ザ・レヴェレイター)』(Time (The Revelator), 2001)のタイトルトラック。ギリアン・ウェルチ(1967-)はアメリカのシンガーソングライター。デヴィッド・ローリングズ(David Rawlings)と共同で、フォークやブルーズを主体にさまざまなアメリカの伝統音楽の要素を混合させた唯一無二の作品をゆったりとしたペースで世に放ち続けている。そしてそのどれもが批評家筋からは絶賛され、2020年リリースの『オール・ザ・グッド・タイムズ(アー・パスト&ゴーン)』(All the Good Times (Are Past & Gone))ではそれまで複数回候補にノミネートされていたグラミー賞にも輝いているのだが、その超然とした佇まいからもわかるように、音楽的流行とかそんなものとはまったく関係のない場所にいる孤高の人。
バンドスタイルのアルバムも出しているが、やはりこの人は弾き語りがよく似合う。アコースティックギターと歌声だけでこれほど説得力のある表現ができるミュージシャンはまれな存在といっていいだろう。その点ではウディ・ガスリーやボブ・ディランの系譜とみなせるかもしれないが(ギリアンはガスリーやディランをはじめとするアメリカのフォーク、ルーツミュージックに多大な影響を受けている)、音楽的には土地に根ざした感じよりも洗練された印象を強く受ける。これは彼女がバークリー音楽大学で作曲を学んだ理論派であることも大きく関係していそうだが、それにしても彼女が体現しているフォークの精神性みたいなものは本物だという気がする。
混同しないように注意したいが、"revelator"は予言者ではなく「預言者」である。前者は単に未来をいいあてる人物を指すのに対して、後者は神から預かった啓示を人々に伝達する人物をいう。第1ヴァースには"traitor"(裏切者)とイスカリオテのユダを指すことばも出てくるので、くりかえされるrevelatorは聖書的なニュアンスを帯びているとみなせるだろう。それと同時に、ブラインド・ウィリー・ジョンソンが1930年に録音した“John the Revelator"(「ヨハネの黙示録」を記したとされるパトモス島の聖ヨハネを指す)といったゴスペル・ブルーズを連想させもする。ほかに第2ヴァース以降はギリアンの自伝的側面(孤児として生まれ、エンターテイナーであったウェルチ夫妻に養子に迎えられた。バークリーに入る前はカリフォルニア大学サンタクルーズ校で学んでいた)が反映されているものと思われるが、こうした聖書や古いブルーズへの言及・引用がみずからの経験と組み合わされて、独特の歌世界が現出するのだ。
“Revelator” (written by Gillian Welch and David Rawlings)Darling, remember
When you come to me
I’m the pretender
And not what I’m supposed to be
But who could know if I’m a traitor
Time’s the revelator
「レヴェレイター」
ダーリン、思い出して
あなたが私のもとに来るとき
私はふりをする者なのだと
そうあるべきものではないのだと
でも私が裏切者かどうかなんて誰にわかる
時は預言者
They caught the KatyAnd left me a mule to ride
The fortune lady
Came along, she walked beside
But every word seemed to date her
Time’s the revelator
The revelator
かれらはケイティに乗り
私にはラバを残した*
幸運の貴婦人が
やってきて、いっしょに歩んでくれた
でもすべてのことばが彼女を古風にみせるようだった
時は預言者
預言者
*この一節はタジ・マハールの“She Caught the Katy (and Left me a Mule to Ride)”(アルバムThe Natch’l Blues(1968)に収録)への言及。1980年の映画The Blues Brothersで用いられて有名になった。なおKaty(つまりK-T)とはカンザス州とテキサス州を結ぶ鉄道のこと(現在ではミズーリ州とも接続しMKT)。
Up in the morningUp and on the ride
I drive into Corning
And all the spindles whine
And every day is getting straighter
Time’s the revelator
The revelator
早朝に目をさます
目をさまし車に乗る
コーニングまで運転する*
そしてすべてのスピンドルがヒューヒューと音を立てる
そして毎日がよりまともなものになりつつある
時は預言者
預言者
*ニューヨーク州西部の都市。
Leaving the valleyFucking out of sight
I’ll go back to Cali
Where I can sleep out every night
And watch the waves and move the fader
Time’s the revelator
The revelator
谷をあとにする
ようやく視界から消える
私はカリにもどる*
そこでは毎晩外で眠り
波を見つめたりフェーダーをいじったりできる
時は預言者
預言者
*カリフォルニアのこと。やや軽蔑的な呼称のためカリフォルニアの住民たちには好まれない。
Queen of fakes and imitatorsTime’s the revelator
偽物たちと模倣者たちの女王
時は預言者







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