【歌詞対訳】”This Charming Man” / The Smiths

2025年7月17日

僕がザ・スミスを初めて聴いたのは高校2年のときだった。レッド・ツェッペリンやらディープ・パープルやら、そういうこてこてのロックに聞き飽きて、レディオヘッドに興味を持ち始めた時期だったと思う。一聴して、直感的にこれは自分の理解能力を超えていると感じた。最初に聞いたのは何しろ『OK Computer』だったのだ。けれどそのままわからないのもくやしいので、まず彼らがどんな音楽に影響を受けているのか調べることにした。そうやってスミスに行きついた。

自虐や皮肉に満ちた、強烈なメッセージ性をもつ文学的な歌詞をなよなよと、しかし高らかに歌い上げるモリッシーと、技巧的なギタープレイで唯一無二のきらきらサウンドを奏でるジョニー・マー。もちろん全面的にとは言わないが、部分的には、この二人はレノン=マッカートニーにすら匹敵するように思う。軽い気持ちでTSUTAYAにCDを探しにいった自分は、適当に借りてきたベスト盤のせいで貴重な青春をスミスの毒に冒されることになってしまった。ベスト盤(Vol.1)の1曲目に収録されている“This Charming Man”を聞いたときの衝撃はいまだに忘れられない。

“This Charming Man" (written by Morrissey and Johnny Marr)

Punctured bicycle

On a hillside desolate

Will nature make a man of me yet?

When in this charming car

This charming man

「ディス・チャーミング・マン(ある魅力的な男)」

荒涼たる丘の斜面で

パンクした自転車

大いなる自然はもう僕を一人前の男にしようっていうのかい?

そのとき魅力的な車に乗って現れたのは

一人のある魅力的な男*

*初出のthisは「この」と訳さない。いきなり「この魅力的な男は…」と言われても「誰?」となってしまうので。すでに特定化されているものとして扱うことで聞き手の注意を引く用法。

Why pamper life’s complexties

When the leather runs smooth on the passenger seat?

どうして人生の煩わしさに好き放題させるんだい?

助手席の革張りは こんなにもなめらかだというのに

I would go out tonight

But I haven’t got a stitch to wear

This man said, 'it’s gruesome

That someone so handsome should care’

今夜ぼくは外出するんだ

でもね 着ていく服がないんだよ

すると男は言った、「それはぞっとするね

君みたいにハンサムな子がそんなことを気にするなんて」

A jumped-up pantry boy

Who never knew his place

He said, 'return the ring’

He knows so much about these things

He knows so much about these things

身のほどをわきまえない

うぬぼれた配膳係の少年*

彼はこう言った「指輪を返してくれよ」

彼はこの手のことはよく知っている

彼はこの手のことはよく知っている

*1「アーッ!」という奇声が不定冠詞のaだと知ったときは妙に感動した。jumped-upは(英略式)で「成り上がりの、うぬぼれた」の意味。