【歌詞対訳】”I Can Do It with a Broken Heart” / Taylor Swift
11作目のアルバム『ザ・トーチャード・ポエツ・デパートメント(悩める詩人たちの部門)』(The Tortured Poets Department, 2024)からのセカンドシングル。高校のころ、クラスにやたらとテイラー推しの男子がいたが、当時の僕はレディオヘッド、ニルヴァーナ、スミスあたりにはまっていたから、テイラー・スウィフトとかいういかにも野暮ったいカントリーシンガーのことなどまったく眼中になかった。そんな無関心が180度変わるきっかけになったのは、2020年リリースの『フォークロア』だ。これは地味だけどほんとうに深いエモーションに満ちたアルバムで、どうやらテイラーはただのポップアイコンじゃないらしいぞと思いはじめた。まあ、コロナ禍でコンサートができなくなり、戦略的にインディーポップ路線へと舵をきったところもあると思うけど、いい作品であることに変わりはない。
2020年代に入ってからのテイラーは尋常じゃないほどの仕事をこなしている。アルバムリリースについては、『フォークロア』(2020)、『エヴァ―モア』(2020)、『ミッドナイツ』(2022)、『ザ・トーチャード』(2024)の4作に加えて、『ザ・ライフ・オブ・ア・ショーガール』(2025)のリリースが先日アナウンスされたばかり。これら5作に加えて『フィアレス』(2008)、『レッド』(2012)、『スピーク・ナウ』(2010)、『1989』(2014)のリレコーディング(背景にある原盤所有権の問題は正直よくわからないけど)をあわせると5年間で9枚のアルバムをリリース、しかも半分ちかくは2023年から24年にかけて行われた大規模なジ・エラズ・ツアーの合間に制作されていることになる。旺盛すぎる仕事ぶりだ。「ティム・マグロウのことを考えるときは、私のことを思ってね」("Tim McGraw")と歌っていた16歳の素朴なカントリーガールがまさかこれほど遠いところまで歩いていくことになるとは、たぶん誰にも想像できなかっただろう。
テイラー・スウィフトのなにがいったいここまで人を惹きつけるのだろう? 等身大の自分が考えたり感じたりしたことをもとにした歌が若い女性を中心に共感をあつめるから。たしかにそれは大きな要因だと思うけど、それだけならシャナイア・トウェインとたいして変わらない。僕が思うのはテイラーという人間にそなわった圧倒的なまでのタフネスである。普通の女の子であればそこまで攻撃されたらつぶれるよねというものの一切をはねのけて、自分の経験を頭からしっぽまで余さず素材にするみたいな感じでヒット曲を量産していく。アメリカ人はそういうタフな女の子のサクセス・ストーリーがとにかく好きだ。スーパースターなのにごく普通の女の子とおなじように恋に悩んでいて、でもやっぱりだれにも手が届かない圧倒的なまでのカリスマを発揮するという、一見して相矛盾するような顔がひとつになっている。そこに人気の秘密がありそうだ。
この曲で彼女がやってみせているのはだれもが認めるスーパースターの裏側の暴露である。テイラーがデビューしたゼロ年代の後半、ここ日本では「会いに行けるアイドル」というコンセプトのもとAKB48が人気を集めるようになった(べつにどうでもいいが、上記のテイラー男子は前田敦子推しでもあった)。これは画期的なことで、なぜかというと、アイドルがアイドルでいられるのはファンとのあいだに絶対的な距離が存在しているからだ。それを取りはらってしまい、さらにSNS全盛の時代になりファンとの距離がどんどん近づいていくと、ほかならぬ距離によって担保されていた神秘性が薄れていく。その結果、アイドルは、私はあなたたちとは違うまぎれもないスターなんですよということを前提に、その裏側を暴露することで共感を得るという戦略をとるようになる(最近だと『推しの子』がまさにそういう作品だった)。もちろん歌手とアイドルはちがうものだが、そもそも英単語の"idol"は「偶像」という意味なので、ファン(=崇拝者)との距離が重要であるという点ではどちらも同じだろう。
「裏側の暴露」はしかし、下手をすると単なる内輪ネタで終わってしまい、もしかしたらファンとしてとりこめるはずの層を遠ざけてしまうという意味では諸刃の剣だろう。テイラーの曲はその自伝性の高さが特徴であるとはいえ、最近は彼女のプライベートについて調べなければぜんぜんわからないというものが増えてきている印象を受ける。はたしてこの最強のポップアイコンは、ショーガールという仮面をかぶってどこへ向かっていくのだろうか。
“I Can Do It with a Broken Heart” (written by Taylor Swift and Jack Antonoff)I can read your mind
“She’s having the time of her life"
There in her glittering prime
The lights refract sequin stars off her silhouette every night
I can show you lies
「アイ・キャン・ドゥ・イット・ウィズ・ア・ブロークン・ハート」
私にはあなたの心が読める
「彼女はまさに人生を謳歌してるんだ」
そのもっとも輝ける時をね
照明は毎晩彼女のシルエットに浮かぶスパンコールの星を屈折させる
あなたに嘘を教えてあげる
Cause I’m a real tough kidI can handle my shit
They said, “Babe, you gotta fake it 'til you make it" and I did
Lights, camera, bitch smile
Even when you want to die
He said he’d love me all his life
But that life was too short
Breaking down, I hit the floor
All the piеces of me shatterеd as the crowd was chanting, “More"
I was grinning like I’m winning
I was hitting my marks
Cause I can do it with a broken heart
だって私はマジもんのタフキッドだから
自分の問題くらい自分でどうにかできる
「ベイブ、うまくいくまで見せかけなくちゃいけないよ」っていわれるから、私はそうした
照明、カメラ、ビッチスマイル
彼は一生私を愛するといってくれた
でもその一生はあまりに短かった
取り乱して、私は床にくずれ落ちた
観客が「もっと」と叫ぶうちに私のすべてのピースが砕け散った
私は愛嬌があることを示すようににっこり笑みを浮かべていた
的をうちぬきまくっていた
心が傷ついていても私にはそれができるから
I’m so depressed, I act like it’s my birthday every dayI’m so obsessed with him, but he avoids me like the plague
I cry a lot, but I am so productive, it’s an art
You know you’re good when you can even do it with a broken heart
とことん落ち込んでる、でも毎日が誕生日みたいにふるまってる
とことん彼に執着してる、でも彼は私を疫病みたいに避ける
いっぱい泣くけど、私はすごく生産的、これはひとつの技
心が傷ついているのにうまくやれてしまう、そう思えるのはいいことよ
I can hold my breathI’ve been doing it since he left
I keep finding his things in drawers
Crucial evidence I didn’t imagine the whole thing
I’m sure I can pass this test
じっと息をひそめる
彼が去ってから私はずっとそうしてる
引き出しを開けるといつまでも彼の物がみつかる
どれもこれも想像もしなかった決定的な証拠
私はこのテストをかならずパスできる
Cause I’m a real tough kidI can handle my shit
They said, “Babe, you gotta fake it 'til you make it" and I did
Lights, camera, bitch smile
In stilettos for miles
He said he’d love me for all time
But that time was quite short
Breaking down, I hit the floor
All the pieces of me shattered as the crowd was chanting, “More"
I was grinning like I’m winning
I was hitting my marks
Cause I can do it with a broken heart
だって私はマジもんのタフキッドだから
自分の問題くらい自分でどうにかできる
「ベイブ、うまくいくまで見せかけなくちゃいけないよ」っていわれるから、私はそうした
照明、カメラ、ビッチスマイル
スティレット・ヒールを履いて何マイルでも
彼はずっと私を愛するといってくれた
でもそのずっとはほんとに短かった
取り乱して、私は床にくずれ落ちた
観客が「もっと」と叫ぶうちに私のすべてのピースが砕け散った
私は愛嬌があることを示すようににっこり笑みを浮かべていた
的をうちぬきまくっていた
心が傷ついていても私にはそれができるから
I’m so depressed, I act like it’s my birthday every dayI’m so obsessed with him, but he avoids me like the plague
I cry a lot, but I am so productive, it’s an art
You know you’re good when you can even do it with a broken heart
とことん落ち込んでる、でも毎日が誕生日みたいにふるまってる
とことん彼に執着してる、でも彼は私を疫病みたいに避ける
いっぱい泣くけど、私はすごく生産的、これはひとつの技
心が傷ついているのにうまくやれてしまう、そう思えるのはいいことよ
You know you’re good when you can even do it with a broken heartYou know you’re good
And I’m good
Cause I’m MISERABLE
And nobody even knows
Ah, try and come for my job
心が傷ついているのにうまくやれてしまう、そう思えるのはいいことよ
そう思えるなら大丈夫
私は大丈夫
だってみじめなんだから!
だれも知りもしないけど
あー、やれるもんなら私の仕事をやってみなさいよ*
*アメリカではわりと知られたフレーズらしい。come forはここでは「~を奪い取りに来る」ということ。








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