【歌詞対訳】”My Love Mine All Mine” / Mitski

7作目のアルバム『ザ・ランド・イズ・インホスピタブル・アンド・ソー・アー・ウィ』(The Land Is Inhospitable and So Are We, 2023)からの4thシングル。リリース後、SNSでおおいにバズったことで有名になった曲。個人的に、ミツキといえばまず「ユア・ベスト・アメリカン・ガール」("Your Best American Girl")を思いうかべてしまうのだけど、それももう10年近く前の曲で、むしろ最近のZ世代的にはこの曲のほうが支持できるということらしい。ただひとこと、美しい曲である。オルタナティヴ・ロックで「月」といえば僕にとってはレディオヘッドの「セイル・トゥ・ザ・ムーン」("Sail to the Moon")が思い出深いという意味で美しい曲だが、ミツキのほうは月をあくまでモチーフのひとつとして扱いつつ、確固たるメッセージをイノセントで飾り気のない方法で表現しているところにその美しさがあるのだと思う。

近年、知名度が高まっていくにつれて、YouTubeやTikTokといったSNSにおける彼女の存在感も目にみえて大きなものになりつつある。スポティファイの"Sad Girl Music"という安易なカテゴリーにくくられるのを明確に拒否している姿勢が話題になっているようだけれど、それに異議をとなえるような人たちは「私の体は砕けた小さな星でできている」("My Body’s Made of Crushed Little Stars")でも聞いてぶっ飛んでもらえればと思う(笑)。まあ"sad"っていうひとつの感情ではなく"sad girl"というひとつの概念が、コロナ禍の影響もあって英語圏の若者たちに自然になじんだのではないかという気がするけれど、単にいい音楽はいい音楽でなぜいけないのだろう。つくづく人間というのは複雑なものにラベルを貼って単純化したがるものだよなと思う。

“My Love Mine All Mine” (written by Mitski)

Moon, a hole of light

Through the big top tent up high

Here before and after me

Shining down on me

Moon, tell me if I could

Send up my heart to you

So when I die, which I must do

Could it shine down here with you

「マイ・ラヴ・マイン、オール・マイン」

お月さま、それは空にぽっかりあいた光の穴

はるか頭上にひろがるサーカステントからもれ出て*1

ここにいるわたしの前でも後ろでも*2

わたしを明るく照らしつづける

お月さま、教えて

あなたにわたしの心を送りとどけることができるかしら?

そうしたら死んだとき、それはかならずおとずれることだけれど

あなたといっしょにわたしの心も明るく照らすことができると思うの

*1 big top (tent) 口語で「(サーカスの)大テント」のこと。

*2 ネットでみつかるいろんな和訳を参照したところ、“before and after me”を時間的に解釈して「私の存在する前もあとも」としているものが多く目についた。だがよく考えてみてほしい。私が生まれる前、そして私がこの世を去ったあとを指しているのだとすると、いずれの場合も私はこの世に存在していないので、したがってお月さまの光などあびることはできないはずである。

……いや待てよ、私がいなくなっても私の心はお月さまといっしょに上から照らすことができると続くから、位置的な前後をあらわしているのではなく、やっぱり時間的な前後なのか? そうするとmeはじつはちがう人物を指している? かくして僕は袋小路に入ってしまったので、YouTubeにあがっている公式の歌詞和訳リリックビデオを見たところ「後ろからも 前からも 今」と、位置的に解釈してあった。おそらくミツキ自身の手による日本語だと思うけど、歌詞全体がとにかくすばらしく(曲を作った本人なんだからあたりまえか)、自分がやってるのはまさに「屋上屋を架す」ことなのだと思い知らされた。

'Cause my love is mine, all mine

I love, my, my, mine

Nothing in the world belongs to me

But my love, mine, all mine, all mine

だってわたしの愛はわたしのもの、みんなわたしのもの

わたしは自分のものをだいじにする

この世界にわたしのものはなにもない

でもわたしの愛はわたしのもの、みんなわたしのもの、みんなわたしのもの

My baby here on earth

Showed me what my heart was worth

So when it comes to be my turn

Could you shine it down here for her

この地上にいるわたしのたいせつな人が

わたしの心にどれほどの価値があるか教えてくれた

わたしの番がまわってきたら

彼女のためにわたしの心を輝かせてくれませんか?

'Cause my love is mine, all mine

I love, my, my, mine

Nothing in the world belongs to me

But my love, mine, all mine

Nothing in the world is mine for free

But my love, mine, all mine, all mine

だってわたしの愛はわたしのもの、みんなわたしのもの

わたしは自分のものをだいじにする

この世界にわたしのものはなにもない

でもわたしの愛はわたしのもの、みんなわたしのもの

この世界にただでわたしのものになるものはなにもない

でもわたしの愛はわたしのもの、みんな、みんなわたしのもの