【歌詞対訳】”Mrs. Robinson” / Simon & Garfunkel
アルバム『ブックエンズ』(Bookends, 1968)に収録。サイモン&ガーファンクルを象徴する曲であると同時に時代を超えて愛される不朽の名曲であろう。67年の映画『卒業』(The Graduate)の主題歌としてもあまりに有名だが、フルバージョンが収録されているのは上記アルバム。
いまどきは検索ボックスに「Mrs.」と打ち込んだだけでGREEN APPLEと出てくる時代だが、あいにくここで僕が扱うのはかれらの曲ではない。先日は、十代くらいの少年たちが「スピッツのロビンソンだっけ? ロビンソンのスピッツ?」とかいってるのを耳にして、ひとりで吹き出しそうになった。そうか、君たちはもうそういう世代なんだな……となんだかしんみりしてしまった次第。気になっていちおう調べてみたが、「ロビンソン」そのものはこの曲とはなんの関係もなかった。
最近のJ-POPシーンを眺めていると、ミセスにせよ米津にせよYOASOBIにせよ、アニメとのタイアップという日本文化はほんと元気だよなあと感じる。タイアップ楽曲は作品の内容を知らないと歌詞の意味がつかめないというところで共通項があるのだが、それは『卒業』および"Mrs. Robinson"にもそっくりそのままあてはまる。まずタイトルからしてミセス・ロビンソンってだれなんだ?と。ある特定の世代からしたら『卒業』と"Mrs. Robinson"は頭のなかでがっちり紐づいており、切っても切りはなせるものではないはずだが、ゆとり世代の僕なんかからしたら、自分の意志で映画を観ようと、曲を聞こうとしなければ、このふたつは結びつかない。勉強が必要なのである。
歴史のある曲なのでネット上にはさまざまな考察があふれかえっているが、ひとまず訳をとるにあたっては"Mrs. Robinson"をどう訳すかが大きなポイントになってくる。これがもし情報量の多い散文であれば、直訳して「ロビンソン夫人」、あるいは単に「ロビンソンさん」などとするのが自然だろう。だが個人的には、幾度も呼びかけられる"Mrs. Robinson"は「ミセス・ロビンソン」であって、それ以外には置き換えられないと考える。
というのは、くりかえし出てくる"Woah, woah, woah"や"Hey, hey, hey"がそれらとして成り立つのはあくまでその「音」であるからであって、ある意味では"Mrs. Robinson"もそのような意味の空疎な記号なんじゃないかと感じられるからである。映画のなかでも彼女は個人の特定に結びつくファーストネームを有していないというのはけっして見逃せない事実だ。たしかにファーストネームが不明なのはなにも彼女に限ったことではないが、作中での役どころを考えると、彼女が一貫して「ミセス・ロビンソン」としか言及されないのはあきらかになにかを意図している。彼女は表向きにはミスター・ロビンソンの「妻」であり、エレーンの「母」であると、そういった関係性をあらわす語によってしか存在していないのだ(彼女に裏の顔があることはここであえていうまでもない)。
以前から、最後のコーラスに出てくるジョー・ディマジオがまたあまりに唐突というか、彼である必然性がどこにあるのかと疑問に思っていたのだが、考えてみればディマジオも特定の個人である以上に、歌のなかでは「ヒーローの喪失」を象徴する単なる記号としての印象が強い(その証拠にというべきか、ポール・サイモンのお気に入りはミッキー・マントル(Mickey Mantle, 1931-95)だったらしいが、音符にあてはめるためにディマジオが選ばれたということらしい笑)。記号だらけの歌なのである。あくまで音が形式であり、同時にその本質である記号としてとらえるならば、日本語においては「ミセス・ロビンソン」とする以外に手はない。
“Mrs. Robinson" (written by Paul Simon)And here’s to you, Mrs. Robinson
Jesus loves you more than you will know
Woah, woah, woah
God bless you please, Mrs. Robinson
Heaven holds a place for those who pray
Hey, hey, hey
Hey, hey, hey
「ミセス・ロビンソン」
あなたのために乾杯、ミセス・ロビンソン
ご自分で思うよりずっとあなたはイエスに愛されていますよ
Woah, woah, woah
どうかあなたに神のお恵みを、ミセス・ロビンソン
天国には祈る者たちのための場所がとってありますから
Hey, hey, hey
Hey, hey, hey
We’d like to know a little bit about you for our filesWe’d like to help you learn to help yourself
Look around you, all you see are sympathetic eyes
Stroll around the grounds until you feel at home
書類のためにわれわれはすこしあなたのことを知りたいのですが
手助けをしたいのです、あなたがご自分を大切になさるように
まわりを見わたしてごらんなさい、どこもかしこも同情にみちた眼ばかりだ
構内をぶらつくといいですよ、気持ちがほっと落ち着くまで
And here’s to you, Mrs. RobinsonJesus loves you more than you will know
Woah, woah, woah
God bless you please, Mrs. Robinson
Heaven holds a place for those who pray
Hey, hey, hey
Hey, hey, hey
あなたに乾杯、ミセス・ロビンソン
ご自分で思うよりずっとあなたはイエスに愛されていますよ
Woah, woah, woah
どうかあなたに神のお恵みを、ミセス・ロビンソン
天国には祈る者たちのための場所がとってありますから
Hey, hey, hey
Hey, hey, hey
Hide it in a hiding place where no one ever goesPut it in your pantry with your cupcakes
It’s a little secret, just the Robinsons’ affair
Most of all, you’ve got to hide it from the kids
けっしてだれも立ち入らない隠し場所に隠してください
カップケーキといっしょに食料貯蔵室にいれてください
ちょっとした秘密ですよ、ロビンソン家の情事です
なによりもまず、お子さんたちには見つからないように
Coo, coo, ca-choo, Mrs. RobinsonJesus loves you more than you will know
Woah, woah, woah
God bless you please, Mrs. Robinson
Heaven holds a place for those who pray
Hey, hey, hey
Hey, hey, hey
Coo, coo, ca-choo、ミセス・ロビンソン*
ご自分で思うよりずっとあなたはイエスに愛されていますよ
Woah, woah, woah
どうかあなたに神のお恵みを、ミセス・ロビンソン
天国には祈る者たちのための場所がとってありますから
Hey, hey, hey
Hey, hey, hey
*ビートルズの“I am the Walrus”に出てくるGoo-goo-g’joobへのオマージュ。
Sitting on a sofa on a Sunday afternoonGoing to the candidates debate
Laugh about it, shout about it
When you’ve got to choose
Every way you look at it, you lose
日曜日の午後ソファに腰をおろす
候補者たちの討論会に出かける
選ばなくてはいけないそのときに
それを笑う、それを叫ぶ
どうみたって、あなたは敗れるしかない
Where have you gone, Joe DiMaggio?A nation turns its lonely eyes to you
Woo, woo, woo
What’s that you say, Mrs. Robinson?
Joltin’ Joe has left and gone away
Hey, hey, hey
Hey, hey, hey
あなたはどこに行ってしまったんだ、ジョー・ディマジオ?
国民たちはさびしげな眼をあなたに向けている
Woo, woo, woo
なんですって、ミセス・ロビンソン?
ジョルティン・ジョーは去り、姿を消してしまったんですよ*
Hey, hey, hey
Hey, hey, hey
*ニューヨーク・ヤンキースで活躍したプロ野球選手ジョー・ディマジオ(Joe DiMaggio, 1914-99)のニックネーム。







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